母乳による育児は、世界中で推奨されている。母乳育児と産後うつ病との関係を調査した研究はいくつか行われているが、矛盾した結果が得られている。富山大学の島尾 萌子氏らは、生後1~6ヵ月の乳児への栄養方法が母親の産後うつ病に及ぼす影響、産後うつ病に対する授乳中の母親が行ったことの影響について調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2021年4月15日号の報告。
JECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)に参加した親子のデータを分析した。対象は、産後1ヵ月で抑うつ症状を呈さなかった母親7万1,448人。調査には、自己記入式質問票を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・産後6ヵ月間母乳だけで育児を続けた母親は、そうでなかった母親と比較し、産後うつ病リスクが低かった。
・摂食中に乳児とのアイコンタクトを維持したり、話し掛けたりした母親は、そうでなかった母親と比較し、栄養方法やその期間と関係なく産後うつ病リスクが低かった。
・産後6ヵ月間母乳だけで育児を続け、摂食中に乳児とのアイコンタクトを維持したり、話し掛けたりした母親の産後うつ病のオッズ比は0.69(95%CI:0.61~0.79)であり、最も低かった。
著者らは「母乳育児の推奨や乳児との関わりに関する適切な情報提供を行うことで、産後うつ病の発症を抑制できる可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)