メマンチンによるPTSD治療の有効性

提供元:ケアネット

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公開日:2021/05/04

 

 現在、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する薬理学的治療の選択肢は十分でなく、新たな薬物治療アプローチの開発が待たれている。国立精神・神経医療研究センターの堀 弘明氏らは、一般人のPTSDに対するNMDA受容体拮抗薬であるメマンチンの有効性および安全性を評価するため、12週間のオープンラベル臨床試験を実施した。European Journal of Psychotraumatology誌2021年1月15日号の報告。

 対象は、一般人女性のPTSD成人患者13例(DSM-IV基準)。対象患者には、4週目までは毎週、その後は12週目まで4週間ごとに外来診療を行った。各患者の現在の治療薬に、メマンチン5mg/日を追加し、その後用量調整を行った。基本的に併用薬は、試験期間中に変更しなかった。主要アウトカムは、外傷後ストレス診断尺度(PDS)で評価したPTSD診断および重症度とした。

 主な結果は以下のとおり。

・13例中1例が脱落、2例がプロトコール逸脱のため試験を終了したため、10例について分析を行った。
・平均PDS総スコアは、ベースライン時の32.3±9.7から12週目の12.2±7.9へ有意な改善が認められた(paired t検定:p=0.002、d=1.35)。侵入症状、逃避症状、過覚醒症状の有意な改善が認められた。
・6例は、12週目にPTSD診断基準を満たさないまで回復がみられた。
・睡眠障害、眠気、鎮静、体重変化、低血圧などメマンチンに関連する可能性のある有害事象が観察されたが、いずれも重篤ではなかった。

 著者らは「メマンチン治療は、一般のPTSD女性の症状を有意に改善し、忍容性も良好であった。PTSDに対するメマンチンの有効性および安全性を検証するためにも、今後のランダム化比較試験が求められる」としている。

(鷹野 敦夫)