統合失調症患者に対するVR介入の可能性

提供元:ケアネット

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公開日:2021/05/05

 

 統合失調症は、重度および障害を伴う精神疾患であり、社会的機能の持続困難と関連する。仕事の継続や社会的な関係を維持することは、患者にとって困難な場合もあり、限られた薬物療法の選択肢では、機能不全の治療が難しいことも少なくない。医学的な治療の限界に対処するため、心理療法の分野では、いくつかの革新的かつ興味深いアプローチが導入されている。ハンガリー・センメルワイス大学のEdit Vass氏らは、統合失調症患者に対するバーチャルリアリティー(VR)介入の可能性について、症例ベースの報告を行った。Frontiers in Psychology誌2021年2月26日号の報告。

 VR治療の潜在的なベネフィットは、対人関係問題に対処する必要がある場合に、とくに有用である。たとえば、VRに基づく心理介入(VR-ToMIS)は、患者が実社会における負荷を感じることなく、複雑な社会的相互関係を実践できるように促す新しい手法である。本報告では、VR-ToMISを実施した統合失調症患者の経過について紹介された。

 主な結果は以下のとおり。

・罹病期間20年の統合失調症女性(50歳)。
・長年コンプライアンスに関する問題は認められなかったが、社会的機能に関して深刻な問題を抱えていた。
・VR-ToMISを用いて、ToMや実践的なコミュニケーションスキルの向上が認められた。
・介入効果は、テスト時のスコア増加を上回っていた。
・介入前は、相互コミュニケーションの主な原則に従うことができず、失業リスクが高かった。
・対象患者に対するVR-ToMISは、想定以上の有益な効果が認められた。
・介入後は、バランスの取れたコミュニケーションの実践が可能となり、仕事を継続することができた。

 著者らは「VR-ToMISは、統合失調症患者の社会的機能障害を治療するための有望なツールである可能性が示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)