高齢者の再発性転倒のリスク因子は、バランスと可動性、投薬、心理的、感覚および神経筋に分類される可能性が明らかになった。1年に2回以上繰り返し転倒する高齢者は、機能低下と死亡のリスクがあるため、これらの脆弱性マーカーを特定することが転倒予防への近道になりうると考えられる。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のDeborah A. Jehu氏らによるこの研究の詳細は、Maturitas誌2021年2月号に報告された。
再発性転倒のどのリスク因子が最も重要なのか理解することは、転倒の2次予防戦略を立てるうえで助けとなる。さまざまな転倒リスクに対する再発性転倒の相対リスクを検証するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。
2019年4月25日にMEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHLデータベースを検索し、抽出した論文には60歳以上の再発性転倒に寄与するリスク因子を調査した前向き研究を含めた。各リスク因子は、Lordらの転倒リスク因子分類を用いて(1)バランスと可動性、(2)環境、(3)心理的、(4)医学的、(5)投薬、(6)感覚および神経筋、(7)社会人口学、いずれかのドメインに分類し、各ドメインの相対リスクの概算とバイアスのリスク評価および研究の質的評価を行った。
主な結果は以下のとおり。
●本システマティックレビューとメタ解析には22件の研究が含まれた。
●以下の4つのドメインが再発性転倒を予測した。
・バランスと可動性(相対リスク:1.32、95%CI:1.10~1.59)
・投薬(相対リスク:1.53、95%CI:1.11~2.10)
・心理的(相対リスク:1.35、95%CI:1.03~1.78)
・感覚および神経筋(相対リスク:1.51、95%CI:1.18~1.92)
●これら4つのドメインは、脆弱性マーカーとして見なしうる。
●バイアスのリスクは低く、また、研究の質は高かった(最低:19/22)。
●虚弱性マーカーを呈する高齢者は、転倒を繰り返す可能性が最大53%高くなる。
(ケアネット 池田 里美)