双極性障害患者は、肥満の割合が高く、このことが神経構造の変化と関連しているといわれている。しかし、双極性障害患者の脳構造に対する肥満の影響は、十分に研究されていない。カナダ・ダルハウジー大学のSean R. McWhinney氏らは、双極性障害におけるBMIと皮質下脳容積との関連について、検討を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年4月16日号の報告。
ENIGMA-BDワーキンググループ内の独立した研究サイト17件より、双極性障害患者1,134例、対照群1,601例の皮質下脳容積(MRI測定)およびBMIのデータを収集した。混合効果モデルを用いて、皮質下脳容積に対する双極性障害とBMIの影響を併せてモデル化し、ノンパラメトリックブートストラップを用いて、肥満の違いによる影響をテストした。すべてのモデルは、年齢、性別、脳半球容積、頭蓋内容積、データ収集サイトにより制御した。
主な結果は以下のとおり。
・双極性障害患者は、対照群と比較し、以下の特徴を有していた。
●BMIが有意に高い
●側脳室容積が大きい
●扁桃体、海馬、淡蒼球、尾状核、視床容積が小さい
・BMIは、脳室および扁桃体容積と正の相関が認められ、淡蒼球容積と負の相関が認められた。
・双極性障害とBMIの影響を併せてモデル化した場合、双極性障害とBMIの両方が側脳室と扁桃体容積に関連していた。
・BMIを調整した場合、双極性障害と対照群の脳室容積の差が減少した。
・とくに、双極性障害と脳室容積との関連の18.41%はBMIによる影響を受けていた(Z=2.73、p=0.006)。
著者らは「BMIは、双極性障害と同様に、側脳室、扁桃体、淡蒼球を含む局所脳容積と関連していた。双極性障害において最も複製された調査結果の1つとして、BMIの高さが脳室の大きさと部分的に関連する可能性が示唆された。このことは、双極性障害患者に合併する肥満が、神経構造の変化を助長することを意味している。今後のプロスペクティブな脳画像研究により、肥満が神経構造の変化に対し修正可能なリスク因子であるかを調査する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)