がん患者に対する新型コロナワクチンBNT162b2(ファイザー)の安全性と免疫原性をがん患者における評価を目的とした前向き観察研究の結果が発表された。
対象は、2020年12月8日~2021年2月18日に、ロンドンの3つの病院でBNT162b2接種を受けたがん患者と健康成人(主に医療従事者)。複合主要評価項目は、がん患者におけるBNT162b2ワクチンの初回接種後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合、2回目(初回から21日後)接種後の同陽性例の割合であった。
主な結果は以下のとおり。
・期間中に151例のがん患者(固形がん95例、血液がん56例)と健康成人54例が対照群として登録された。
・2回目の接種を受けたのは対照群16例、固形がん患者25例、血液がん6例であった。
・SARS-CoV-2に曝露された17例を除外した、ワクチン初回接種21日後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合は、対照群94%(34例中32例)、固形がん患者38%(56例中21例)、血液がん患者18%(44例中8例)であった。
・2回目接種2週間後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合は、対照群100%(12例中12例)、固形がん患者95%(19例中18例)、血液がん患者60%(5例中3例)であった。
・BNT162b2ワクチンの忍容性は良好で、初回接種後毒性がなかったものはがん患者では54%、対照群では38%、2回目の接種後毒性がなかったものはがん患者では71%、対照群では31%であった。
・毒性は初回接種後7日以内の注射部位の痛みがもっとも多く、がん患者では35%、対照群では48%に発現した。ワクチン関連の死亡は報告されていない。
健康成人例に比べ、がん患者では1回接種でのBNT162b2ワクチンの効果は低いことが示された。一方、固形がん患者においては、2回目ブースト接種から2週間以内に免疫原性が有意に増加した。筆者は、これらのデータは、がん患者におけるBNT162b2ワクチン2回目接種の優先を支持するものだとしている。
(ケアネット 細田 雅之)