TNF阻害薬治療中のIBD患者、新型コロナワクチン単回接種では抗体応答が不良
新型コロナワクチンを巡っては、世界的に需要が高まり、限られた供給量をどう配分するかが各国における喫緊の課題になっており、単回接種の有効性についての研究も進んでいる。一方で、炎症性腸疾患(IBD)など全身免疫を抑制する治療を行っている患者では、免疫応答が十分に得られず、ワクチンの有効性が落ちるのではないかという懸念がある。英国・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのNicholas A Kennedy氏らは、インフリキシマブもしくはベドリズマブ治療中のIBD患者に対し、2種類の新型コロナワクチン(ファイザー製BNT162b2、アストラゼネカ製ChAdOx1 nCoV-19)接種後の抗体価を比較。その結果、インフリキシマブ治療患者では、ベドリズマブと比べワクチン単回接種後の抗体価が有意に低かった。ただし、SARS-CoV-2感染後のワクチン接種、もしくは規定通り2回接種後は、ほとんどの患者でセロコンバージョンが認められた。著者らは、「インフリキシマブ治療患者においては、ワクチンの単回投与に対する抗体応答が悪く、SARS-CoV-2感染のリスクが高まる可能性があり、2回目接種の遅延は避けるべき」と述べている。Gut誌オンライン版2021年4月26日号の報告。
研究グループは、2020年9月22日~12月23日の間に、英国の92医療機関に来院したIBD患者(5歳以上、インフリキシマブまたはベドリズマブ治療を6週間以上実施、過去16週間に少なくとも1回の薬物治療を受けている)7,226例を連続して登録。インフリキシマブ治療中の865例とベドリズマブ治療中の428例を対象とした。
主な結果は以下のとおり。
・1回目のワクチン接種後3~10週間で測定した抗SARS-CoV-2スパイクタンパク抗体濃度は、ベドリズマブ治療群と比べ、インフリキシマブ治療群でBNT162b2およびChAdOx1 nCoV-19ワクチンのいずれにおいても低かった。
・ワクチンの種類に関係なく、ベドリズマブ単剤の治療患者におけるセロコンバージョン率が最も高く、インフリキシマブと免疫抑制剤を併用した患者において最も低いセロコンバージョン率が観察された。
・SARS-CoV-2感染歴がある患者において、いずれかのワクチンの1回目接種前およびBNT162b2ワクチンの2回投与後でより高い抗体濃度およびセロコンバージョン率が認められた。
・インフリキシマブ治療群においても、2回接種後の患者では抗体価の上昇が認められた。
(ケアネット 鄭 優子)
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