新型コロナ患者での皮膚病変が報告されているが、具体的にはどのような症状なのだろうか。福田 知雄氏(埼玉医科大学総合医療センター皮膚科 教授)がメディアセミナーにおいて、「皮膚は健康のバロメーター ~意外と多いコロナの皮膚症状、爪からわかる健康状態~」と題し、皮膚病変が新型コロナ重症度判定にも有用な可能性を示唆した(主催:佐藤製薬)。
蕁麻疹などの皮膚症状でコロナ重症度も判別できる
福田氏はまず、昨年3月にイタリアの皮膚科医が報告した論文
1)を挙げ、「彼らは“新型コロナ(以下、COVID-19)病棟の多くの患者に皮膚症状が出ていた”ことに注目し調査を実施した。その結果、20.4%(18/88例)に皮膚症状(紅斑性皮疹、広範囲の蕁麻疹、水痘様皮疹など)が認められたことを報告した」と説明。しかし、この段階ではCOVID-19と重症度の相関関係は認められておらず、その後9月に発表されたドイツの研究者の論文
2)で、COVID-19のリスク層別化などに役立つ可能性が示唆された。これを踏まえ同氏は、「ある症状はより軽度のCOVID-19の経過を示す臨床的徴候であり、別の症状はより重度の経過を示す赤旗であることが示された。つまり、どんな皮膚症状から何がわかるのか、皮膚症状の理解を深めておくことがCOVID-19の指標確認にもなる」とコメントした。
そこで、同氏はCOVID-19患者での注意すべき皮膚症状
3)のパターンとして、斑状丘疹状皮疹、蕁麻疹、水痘様皮疹、点状出血、しもやけ、そして網状皮斑(リベド)を提示。なかでも“網状皮斑パターン”が見られる患者には新型コロナ重症例が多いことから、「皮膚病変からコロナを疑ったら血液検査にて凝固亢進などのチェックも必要」と注意を促した。
以下に新型コロナ重症度別の主な皮膚病変を示す。
(軽症例)
・凍傷様の浮腫および紅斑状の皮疹(Chilblain-like eruptions on fingers and toes)
若年層の軽症例に観察、平均して2週間後に消失。
手指より足趾/足裏に出現。
・点状出血/紫斑を伴う皮疹(Rash with petechiae/purpuric rash)
鑑別診断には薬疹、他の細菌/ウイルス感染に伴う発疹など。
・多形紅斑様皮疹(Erythema multiforme‐like rash)
軽症の経過をとる傾向がある。小児に多く見られる。
鑑別診断には単純ヘルペス感染症に伴う多形紅斑など。
(重症例)
・水痘様皮疹(Chickenpox-like rash)
中年患者の体幹に認められた。
イタリアの症例では、重症患者88例のうち1例で水痘様皮疹が観察された。
・蕁麻疹様皮疹(Urticarial rash)
発熱を伴う蕁麻疹様皮疹は新型コロナと判断してよい。広範囲で見られるとCOVID-19が重症化する傾向。
蕁麻疹も重症ならCOVID-19も重症になる傾向。
・斑状丘疹状皮疹(Maculopapular rash)
最も頻度が高い皮疹で、新型コロナの重篤な経過と関連。
小児ではまれ、成人では重篤な経過をたどる指標になる可能性がある。
鑑別診断には、はしか、EBウイルス感染症、薬疹、移植片対宿主病など
・男性型脱毛症(Androgenetic alopecia)
男性ホルモンであるアンドロゲンは新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を促進するTMPRSS2プロテアーゼに関与するだけではなく、免疫抑制作用を持っている。男性型脱毛症の特徴的な症状である前頭部-側頭部および頭頂部の退行とCOVID-19による肺炎の発症に対し、関連性が示唆されている。
これらを総括し、「COVID-19の皮膚症状は、早期診断、陽性患者のトリアージおよびそのリスク層別化に役立つ可能性がある。凍傷様の肢端の皮疹、紫斑・多形紅斑様の皮疹は、無症状あるいは軽症の小児や若年成人の患者に認められる。対照的に、先端部の虚血性病変や斑状皮疹は、より重篤な経過をたどる成人患者に多く見られる。発熱を伴う蕁麻疹は、COVID-19が確認されていない場合の初期症状であるため、診断上の意義がある」とまとめた。
このほか、爪による健康状態の判別にも触れ、「健康な人の爪はきれいなピンク色で、艶があり、滑らかで押すとうっすら白くなる。爪は年齢、生活週間、基礎疾患など、爪に影響を与える因子は極めて多い」と患者の爪の健康状態の確認も重要であることを述べ、締めくくった。
(ケアネット 土井 舞子)