重度の精神疾患のマネジメントにおいて、患者の主観的な経験や態度は、重要であると考えられる。イタリア・フィレンツェ大学のLorenzo Tatini氏らは、臨床的に安定した統合失調症外来患者を対象に、経口抗精神病薬から長時間作用型抗精神病薬の維持療法(LAI-AMT)へ切り替え後の治療継続に影響を及ぼす予測因子の潜在的な役割について評価を行った。International Clinical Psychopharmacology誌2021年7月1日号の報告。
6ヵ月以上のLAI-AMTを受けた統合失調症患者59例のデータをレトロスペクティブに収集した。LAI治療を継続した患者と中止した患者を比較するため、ベースライン時の社会人口統計学的および臨床的特徴、精神病理学的特徴(PANSS、MADRS、YMRS)、薬に対する構えの調査(DAI-10)および抗精神病薬治療下主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版(SWNS)で収集した治療経験を評価した。LAI治療中止の予測因子を特定するため、二値ロジスティック分析およびCox回帰分析を用いた。特性の異なるサブサンプルにおけるLAI治療継続と中止を比較するため、Kaplan-Meier推定量を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・LAI治療を継続した患者は32例、中止した患者は27例であった。
・LAI-AMT中止の予測因子は、失業とベースライン時のDAI-10スコアの低さであった。
・その他の人口統計学的、臨床的、精神病理学的特徴に、大きな差は認められなかった。
著者らは「経口抗精神病薬からLAI-AMTへ切り替えを行う場合、DAI-10の評価が臨床的に重要であり、治療中止リスクのある患者を特定することが可能である」としている。
(鷹野 敦夫)