抗精神病薬持効性注射剤(LAI)は、統合失調症患者の症状を軽減し、再発・再燃を防ぐための薬物治療として用いられる。藤田医科大学の谷口 美紘氏らは、LAIの治療継続に影響を及ぼす因子について検討を行った。Biological & Pharmaceutical Bulletin誌2019年第7号の報告。
対象は、2009年10月~2017年6月までに藤田保健衛生大学(現、藤田医科大学)においてリスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾールを含むLAI治療を受けている統合失調症患者。6ヵ月間のLAI治療継続率を評価し、患者背景や投薬歴などの特徴を収集した。さらに、これまでの研究に基づき、LAI導入理由により、対象患者を2つのクラスターに分類した。クラスターIは、コンプライアンス不良や前治療無効患者で構成され、クラスターIIは、病識、教育レベルの高さ、抗精神病薬治療に対する前向きさ、洞察力の高さ、治療関係の良さなどを有する患者で構成されていた。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者は、82例(平均年齢44.9±15.0歳)であった。
・クラスター別の内訳は、Iが54例、IIが28例であった。薬剤別の内訳は、リスペリドン36例、パリペリドン15例、アリピプラゾール31例であった。
・6ヵ月後のLAI治療継続率は、63.4%(52例)であった。
・薬剤ごとの治療継続患者は、リスペリドン17例(47.2%)、パリペリドン8例(53.3%)、アリピプラゾール27例(87.1%)であり、リスペリドンと比較した治療継続率では、アリピプラゾールにおいて有意な差が認められた(p=0.001)。
・LAI治療継続に影響を及ぼす因子は、クラスターII(調整オッズ比[aOR]:5.74、p=0.017)、同成分からの切り替え(aOR:7.13、p<0.001)、ジアゼパム換算率(aOR:0.88、p<0.001)であった。
・6ヵ月以内にLAI治療を中止した理由のうち、最も多かったのは効果不十分(14例、47%)であり、次いで忍容性不良(6例、20%)、中断(3例、10%)であった。
著者らは「LAI治療は、クラスターIIの患者において治療継続率の有意な改善を示した。
さらに、他の因子や中止理由を考慮すると、LAIは、より安定している患者に対して開始することが望ましい」としている。
(鷹野 敦夫)