要介護者のいる家庭や高齢者施設での感染問題で知られる疥癬は、ヒゼンダニが皮膚に寄生することで生じる伝染性皮膚疾患である。承認されたOTC薬はなく、承認された処方薬にも潜在的な耐性などの欠点があるが、土壌放線菌由来のマクロライド系殺虫剤スピノサドが、同治療薬として有効であることが示された。
米国・LSRN ResearchのJeffrey C. Seiler氏らが2つの無作為化試験の結果を解析し、4歳以上の被験者において、スピノサド0.9%懸濁液の1回局所投与が有効であったことを明らかにした。著者は、「スピノサド0.9%懸濁液は標的局所療法として、ほかに選択肢がほぼない医師や患者にとって新たな疥癬治療の選択肢となる」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2021年8月12日号掲載の報告。
研究グループは、2つの対照臨床試験の結果を統合して、疥癬の根絶におけるスピノサド0.9%懸濁液局所投与の有効性を評価した。各試験には、インデックス被験者(疥癬症状が認められる世帯内で最年少の家族)とそれ以外の家族(1世帯最大5人)が包含され、被験者はスピノサド0.9%または溶媒(vehicle)を1回局所投与された。
主要有効性評価項目は、28日目における疥癬が完全に治癒したインデックス被験者の割合であった。追加した有効性評価項目は、臨床的治癒、顕微鏡的治癒、病変数であった。
主な結果は以下のとおり。
・28日目に完全治癒を達成したインデックス被験者の割合は、スピノサド0.9%群と溶媒群で同等ではなかった(それぞれ78.1% vs.39.6%、p<0.0001、n=206例)。
・追加の有効性解析により、スピノサド0.9%の一貫した治療効果が確認された。
・安全性に関するシグナルは観察されなかった。
・スピノサド0.9%は角質層(すなわちダニが潜み繁殖する場所)にも到達するため、疥癬の効果的な治療法になる可能性が示唆された。
本研究は、同等性を評価するために少数サンプルサイズを使用しており、結果は限定的である。
(ケアネット)