シフト勤務は、多くの健康問題、とくにメンタルヘルスの問題と関連していることが報告されている。さまざまな人口統計、ライフスタイル、仕事に関連する要因を考慮し、シフト勤務と抑うつ症状との関連を明らかにするため、ドイツ・ルール大学ボーフムのThomas Behrens氏らは、プロスペクティブHeinz Nixdorf Recall Studyを実施した。Chronobiology International誌オンライン版2021年8月12日号の報告。
抑うつ症状は、うつ病自己評価尺度(CES-D)、Patient Health Questionnaire(PHQ)、抗うつ薬の処方状況により評価した。CES-Dのカットオフ値は、高度と評価される17点以上、PHQのカットオフ値は、9点以上とした。シフト勤務の定義は、7:00~18:00以外の勤務時間を含むものとし、夜間勤務の定義は、0:00~5:00の勤務時間を含むものとした。相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を推定するため、フォローアップ時の年齢、日周指向性(クロノタイプ)、世帯収入、教育で調整し、ロバスト標準誤差を有するポアソン回帰分析を用いて検討を行った。性別により層別化し、分析した。結果のロバスト性を評価するため、さまざまな感度分析と層別分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時、45~73歳のうつ病歴のない就労者1,500人を調査した。
・フォローアップ期間が5年間であった就労者は896人、10年間であった就労者は486人であった。
・ほとんどの分析において、統計学的に有意なレベルに達しなかったが、PHQでの評価によると、夜間勤務の女性において抑うつ症状リスクの増加傾向が認められ(RR:1.78、95%CI:0.71~4.45)、とくに20年以上の夜間勤務の場合、この傾向がより顕著であった(RR:2.70、95%CI:0.48~15.4)。
・年齢別に層別化した場合、60歳以上の女性では、リスクの増加が認められなかった。
・層別化分析では、オーバーコミットメントが女性の抑うつ症状リスクの高さと関連していることが示唆された([CES-D]RR:4.59、95%CI:0.95~22.2、[PHQ]RR:12.7、95%CI:2.89~56.1)。
・感度分析を目的としたサブグループの除外により、女性での関連性は上昇したが、男性のシフト勤務就労者におけるうつ病リスクとの関連は、ほとんど消失していた。
著者らは「女性のシフト勤務就労者では、うつ病リスクに対する悪影響が示唆された。男性では、この関連性が一貫して増加することは確認されなかった」としている。
(鷹野 敦夫)