変異のない進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療に対する新PD-1阻害薬cemiplimabと化学療法の併用を評価するEMPOWER-Lung3試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表された。cemiplimab+化学療法のNSCLC1次治療としての可能性が示唆されている。
EMPOWER-Lung3は2部構成の無作為化第III相試験。今回発表されたのは、Part2試験の2回目の中間解析の結果である。
・対象:未治療の進行NSCLC(組織形/PD-L1発現レベルは問わず、既治療の安定した脳転移例は許容)
・試験群:cemiplimab(350mg)3週ごと+治験担当医が選んだプラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル
・対照群:プラセボ 3週ごと+治験担当医が選んだプラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル
※治療は108週(あるいは進行するまで)行われた。
・評価項目:
[主要評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、最良総合効果、安全性、患者報告アウトカムなど
主な結果は以下のとおり。
・適格患者466例は、無作為にcemiplimab+化学療法群312例とプラセボ+化学療法群154例に割り付られた。
・患者の年齢中央値は63.0歳、 57.1%が非扁平上皮がん、85.2%がStage4であった。
・OS中央値はcemiplimab+化学療法群21.9ヵ月に対し、プラセボ+化学療法群では13.0ヵ月であった。cemiplimab+化学療法群で有意な改善し、主要評価項目を達成した(HR:0.71、 p=0.014)。
・PFS中央値はcemiplimab+化学療法群8.2ヵ月に対しプラセボ+化学療法群は5.0ヵ月で、cemiplimab+化学療法群が有意に改善した(HR:0.56、p<0.0001)。
・サブグループでのOS/PFSのHRでは、組織形を問わず(非扁平上皮がん0.79、扁平上皮がん0.56)、PD-L1を発現している場合は発現レベルを問わず(PD-L1<1%:1.01、1~49%:0.52、≧50%:0.61)、cemiplimab+化学療法群で良好であった。
・ORRはcemiplimab+化学療法群で43.3%、プラセボ+化学療法群では22.7%で、cemiplimab+化学療法群において有意な改善を認めた(p<0.0001)。
・DoRは、cemiplimab+化学療法群15.6ヵ月に対し、プラセボ+化学療法群7.3ヵ月であった。
・全Gradeの有害事象は、cemiplimab+化学療法群の96%、プラセボ+化学療法群の94%で発現した。
・治療中止に至った治療関係有害事象(TRAE)の発現は、cemiplimab+化学療法群は3%、プラセボ+化学療法群は2%であった。
発表者は、cemiplimabと化学療法について、ドライバー変異のないNSCLCの1次治療として新たな選択肢である、と締めくくった。
(ケアネット 細田 雅之)