統合失調症および抗精神病薬と代謝調整不全との関係は、現在十分に確立された知見が示されているが、肥満に対する影響についてはよくわかっていない。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのEmily Smith氏らは、肥満測定画像技術の所見を統合することにより、統合失調症患者の病状や治療に対する肥満の影響を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年8月30日号の報告。
統合失調症は肥満リスクが高く、抗精神病薬に使用により増強される
2021年2月までに報告されたケースコントロール研究およびプロスペクティブ縦断研究を、MEDLINE、EMBASE、PsychINFO、Scopusより検索した。主要アウトカムは、体脂肪率、皮下脂肪、内臓脂肪を含む肥満関連の測定値とした。
統合失調症への肥満の影響を検討した主な結果は以下のとおり。
・統合失調症スペクトラム障害患者における肥満を定量化するため画像診断法を用いた29件の研究を特定した。
・統合失調症スペクトラム障害患者群では、対照群と比較し、肥満関連の測定値が高かった。
●体脂肪率の平均差:3.09%(95%CI:0.75~5.44)
●皮下脂肪の平均差:24.29cm
2(95%CI:2.97~45.61)
●内臓脂肪の平均差:33.73cm
2(95%CI:4.19~63.27)
・抗精神病薬の使用は、皮下脂肪、内臓脂肪の増加との関連が認められたが、体脂肪率には影響を及ぼさないようであった。
●皮下脂肪の平均差:31.98cm
2(95%CI:11.33~52.64)
●内臓脂肪の平均差:16.30cm
2(95%CI:8.17~24.44)
・しかし、体脂肪率の変化は、治療を受けていた統合失調症スペクトラム障害患者と比較し、抗精神病薬未使用/初めて使用の患者のほうが高かった。
著者らは「統合失調症スペクトラム障害患者は、肥満リスクが高く、とくに抗精神病薬に使用により増強されることが示唆された。抗精神病薬未使用の若年患者では、この影響をとくに受けやすい可能性がある。今後の研究では、特定の抗精神病薬の肥満に対する影響や全体的な代謝関連への影響を調査する必要がある」としている。
(ケアネット)