HER2陽性大腸がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の多施設共同第II相試験DESTINY-CRC01の最終解析が第59回日本癌治療学会学術集会で発表された。中間解析に引き続き、良好な成績が示されている。
転移のある大腸がんのうち、HER2陽性腫瘍は2~3%と少ない。また、標的治療は承認されておらず、薬物治療の主体はいまだに化学療法である。そのような中、T-DXdは中間解析で良好な結果を残していた。
・対象:2次治療以上の治療歴を有するHER2陽性切除不能・転移大腸がん患者78例
コホートA(53例):HER2 IHC3+またはIHC2+/ISH+
コホートB(15例):HER2 IHC2+/ISH-
コホートC(18例):HER2 IHC1+
・介入:T-DXd 6.4mg/kg 3週ごと
・評価項目:
[主要評価項目]コホートAでの独立中央判定による確定奏効率(confirmed ORR)
[副次評価項目]ORR(コホートBとC)、病勢制御率(DCR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性と忍容性
主な結果は以下のとおり。
・追跡期間中央値は、コホートA 62.4週、コホートB 27.0週、コホートCは16.9週であった。
・独立中央判定によるconfirmed ORRは、コホートA 45.3% 、コホートBとコホートCはともに0%であった。
・DCRは、コホートA 83.6%、コホートB 60.0%、コホートCは22.2%であった。
・DoRは、コホートA 7.0ヵ月、コホートBとコートCはともに評価不能であった。
・PFS中央値は、コホートA 6.9ヵ月、コホートB 2.1ヵ月、コホートCは1.4ヵ月であった。
・OS中央値は、コホートA 15.5ヵ月、コホートB 7.3ヵ月、コホートCは7.7ヵ月であった。
・安全性は従来のT-Dxdの報告と一貫しており、主なものは低Gradeの消化器系の有害事象であった。
・間質性肺炎/肺臓炎の発現は全Gradeで9.3%、Grade5は3.5%であった。
T-DXd(6.4mg/kg 3週ごと)は、長期追跡においても、HER2陽性大腸がんに対し良好な抗腫瘍活性と持続性を示していた。発表者である近畿大学の川上 尚人氏は、この探索的研究の結果は、HER2陽性の転移を有する大腸がんへのT-DXdの有用性を引き続き支持するものだと述べている。
(ケアネット 細田 雅之)