藤田医科大学の岸 太郎氏らは、成人双極性障害患者の急性躁症状に対する薬理学的介入の有効性、受容性、忍容性、安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年10月12日号の報告。
2021年3月14日までに公表された適格研究をPubMed、Cochrane Library、Embaseの各データベースより検索した。躁症状を有する成人を対象に10日以上の経口薬単剤治療を実施したランダム化比較試験(RCT)を適格研究とし、試験期間中に抗精神病薬によるレスキュー投与を行った研究は除外した。主要アウトカムは、治療反応(有効性)およびすべての原因による中止(受容性)とした。副次的アウトカムは、躁症状の改善と効果不十分による中止とした。
主な結果は以下のとおり。
・適格研究79件のうち、23薬剤とプラセボによる72件の二重盲検RCTをメタ解析に含めた(平均研究期間:3.96±2.39週間、1万6,442例、平均年齢:39.55歳、男性の割合:50.93%)。
・プラセボと比較し、治療反応が高かった薬剤は、アリピプラゾール、アセナピン、カルバマゼピン、cariprazine、ハロペリドール、リチウム、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、タモキシフェン、バルプロ酸、ziprasidoneであった(56研究、1万4,503例)。
・プラセボと比較し、すべての原因による中止が少なかった薬剤は、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、すべての原因による中止が多かった薬剤は、トピラマートであった(70研究、1万6,324例)。
・プラセボと比較し、躁症状の改善が認められた薬剤は、アリピプラゾール、アセナピン、カルバマゼピン、cariprazine、ハロペリドール、リチウム、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、タモキシフェン、バルプロ酸、ziprasidoneであった(61研究、1万5,466例)。
・プラセボと比較し、効果不十分による中止が少なかった薬剤は、アリピプラゾール、アセナピン、カルバマゼピン、cariprazine、ハロペリドール、リチウム、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、バルプロ酸、ziprasidoneであった(50研究、1万4,284例)。
著者らは「各抗精神病薬、カルバマゼピン、リチウム、タモキシフェン、バルプロ酸は、急性躁症状の治療に有効であることが示唆された。ただし、プラセボよりも良好な受容性が認められた薬剤は、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンのみであった」としている。
(鷹野 敦夫)