11月26日、厚生労働省は「ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の今後の対応について」の通知を全国の自治体に向けて発出した。
同省は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症に係る予防接種の積極勧奨について、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛が接種後に特異的にみられたことから、定期接種を積極的に勧奨すべきではないとし、平成25年6月14日発出の通知により接種の積極的な勧奨とならないよう留意するなどの対応を勧告してきた。
今回の通知はその勧告を変更するもので、先の平成25年の通知は廃止され、令和4年4月よりHPVワクチン接種対象者に予防接種法第8条に基づき勧奨を行うこととなる。
現在の状況を終わらせフォローを厚く
厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会および薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会での同ワクチンの有効性・安全性、接種後に生じた症状への対応、ワクチンについての情報提供の取組みなどについて議論が行われた。その結果、第72回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第22回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)で最新の知見を踏まえ、改めて同ワクチンの安全性について特段の懸念が認められないこと、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ることが認められたことから、現在の状態を終了させることが妥当とされた。
ただし、引き続き同ワクチンの安全性の評価、接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関の診療実態の継続的な把握や体制強化は行い、都道府県や地域の医療機関などの関係機関の連携を強化し地域の支援体制の充実、同ワクチンの情報提供の充実はさせていく。
具体的な動きについて
1)HPVワクチンの個別の勧奨について
市町村長は、予防接種法第8条規定による勧奨を行うこと。具体的には、対象者またはその保護者に対し、予診票の個別送付を行うことなどにより、接種を個別に勧奨することが考えられる。
2)HPVワクチンの個別勧奨および接種を進めるに当たっての留意点
(1)個別勧奨を進めるに当たり、標準的な接種期間に当たる者(13歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間にある女子)に対して行うことに加え、これまで個別勧奨を受けていない令和4年度に14~16歳になる女子についても、同ワクチンの供給・接種体制などを踏まえつつ、必要に応じて配慮する。
(2)同ワクチンの接種を進めるに当たっては、対象者などに対しワクチン接種について検討・判断するために必要な情報提供が行われるとともに、被接種者が接種後に体調の変化を感じた際に、地域において適切に相談や診療などの対応が行われるよう、医療機関や医師会などの関係者の連携の下、十分な相談支援体制や医療体制の確保に遺漏なきを期す。
(3)市町村長は、管内の医療機関に対して、HPV感染症に係る定期接種の対象者などが接種のために受診した場合には、同ワクチン接種の有効性および安全性などについて十分に説明した上で、対象者などが接種を希望した場合に接種することを引き続き周知する。
(4)HPV感染症の定期接種を含め、予防接種による副反応疑いの報告が適切に行われるよう、市町村長は管内の医療機関に対し「定期の予防接種等による副反応疑いの報告等の取扱いについて」の周知を引き続き図る。
3)その他
平成25年通知が廃止されるまでの間、積極的な勧奨の差控えにより接種機会を逃した方への対応については、公費による接種機会の提供などに向けて対象者や期間などについての議論を開始した。今後、方針が決定次第、速やかに周知する予定。
なお、この通知にともない「予防接種法第5条第一項の規定による予防接種の実施について」も改訂され、令和3年11月26日より施行された。
(ケアネット 稲川 進)