統合失調症の維持療法において、長時間作用型持続性注射剤(LAI)抗精神病薬の単剤療法は、選択肢の1つとして考えられているが、最近の報告では、LAI抗精神病薬と経口抗精神病薬との併用療法が一般的であるといわれている。この状況について、山梨県立北病院の三澤 史斉氏らが調査を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2021年10月18日号の報告。
LAI第2世代抗精神病薬と経口抗精神病薬の併用療法の状況を調査するため、レトロスペクティブチャートレビューを実施した。また、処方医の併用療法に対する考えを調査するためのアンケート調査も実施した。LAI第2世代抗精神病薬を1ヵ月以上処方された患者を対象に、単剤療法群と併用療法群に分類した。年齢、性別、精神医学的診断、それに付随する向精神薬の併用に関する情報を収集した。
主な結果は以下のとおり。
・132例中39例(29.5%)が、LAI第2世代抗精神病薬と経口抗精神病薬の併用療法を受けていた。
・リスペリドンLAIは、アリピプラゾールLAIと比較し、併用療法の割合が有意に高かった。
・LAI第2世代抗精神病薬との併用で最も処方された経口抗精神病薬は、オランザピンであった。
・LAI第2世代抗精神病薬と同成分の経口抗精神病薬を処方された患者は8例(20.5%)であった。
・患者の60%以上は、LAI第2世代抗精神病薬開始前に経口抗精神病薬の多剤併用を行っていた。
・担当精神科医は、主にアドヒアランスを考慮しLAI第2世代抗精神病薬を処方していた。また、LAI第2世代抗精神病薬の投与量が不十分であると感じて経口抗精神病薬の併用療法を行っていた。
・担当精神科医は、併用療法を行っている3分の2の患者は、経口抗精神病薬のアドヒアランスが80%以上であると考えていた。
著者らは「本研究により、LAI第2世代抗精神病薬と経口抗精神病薬の併用療法は、実際の臨床現場でしばしば行われていることが明らかとなった。臨床医は、LAI抗精神病薬の開始理由を今一度よく考え、併用療法で用いる経口抗精神病薬のアドヒアランスを注意深くモニタリングする必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)