統合失調症は、重度の身体的および精神医学的な症状を伴う深刻な精神疾患である。併発する健康被害が遺伝的リスクにより発生するのか、統合失調症の影響で発生しているかは、よくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のRuyue Zhang氏らは、この課題に対し統合失調症の遺伝的リスクからアプローチを試みるため、英国バイオバンクより統合失調症と診断されていない40万6,929例を対象に、健康関連問題に対する統合失調症ポリジーンリスクスコア(PRS)の影響について調査を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年11月19日号の報告。
各診断は、プライマリケアおよび入院患者の医療記録、がんや死亡に関連する情報を含む健康データを用いて判断した。統合失調症のPRSを生成し、線形回帰とロジスティック回帰を用いて、一般的な健康状態、ICD10における16の主要分類および603疾患との関連をテストした。
主な結果は以下のとおり。
・統合失調症PRSの高さは、全体的な健康評価の低下、入院診断の増加、特殊な疾患の増加との有意な関連が認められた。
・ICD10の4つの主要分類との有意な関連が認められた。
●正の関連:呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、妊娠・分娩・産褥
●負の関連:筋骨格系の疾患
・31の表現型は、統合失調症PRSとの有意な関連が認められ、19の新たな所見については、いくつかの筋骨格系の疾患、呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、静脈瘤、下垂体機能亢進、その他の末梢神経障害との関連が認められた。
著者らは「これらの発見は、統合失調症の遺伝的リスクの多面的な影響に関する情報を提供し、統合失調症と併発するいくつかの疾患がどのように発生するかを考える上で役立つであろう。統合失調症の病態生理学におけるホルモン調節の遺伝的基礎や免疫機構との関連を含めた今後の研究により、統合失調症とその併存疾患の根底にある生物学的機構を解明できる可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)