オミクロン株に対するワクチンの有効性について、発症予防効果はデルタ株と比較して低く、投与後の期間に応じてさらに低下する一方で、入院予防効果は2回目接種後6ヵ月以降も約50%となり、3回目接種により約90%まで高まるというデータが報告された。英国・UK Health Security Agency(UKHSA)が2021年12月31日にオミクロン株に関する大規模調査結果を公開した。
オミクロン株感染者の発症に対するワクチン有効率は?(種類・回数・経過期間ごと)
デルタ株と比較したオミクロン株の症候性COVID-19に対するワクチン有効率(VE)が、診断陰性例コントロールデザインを用いて推定された。2021年11月27日~12月24日までに検査を受けたオミクロン株感染20万4,036例とデルタ株感染16万9,888例のデータを使用している。
ファイザー製、モデルナ製、アストラゼネカ製の各社ワクチンごとの2回目および3回目接種後(交互接種含む)の発症予防効果は以下の通り:
2回目接種後
・すべてのワクチン、すべての期間において、発症予防効果はデルタ株と比較してオミクロン株で低かった。
・アストラゼネカ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は、2回目投与10~14週間後には約30%だったが、20週間後にはなくなっていた(VE=0%以下)。
・ファイザー製またはモデルナ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は2回目投与2~4週間後には約60~70%だったが徐々に低下し、20週間後には約10%だった。
3回目接種後
・1~2回目をアストラゼネカ製、3回目にファイザー製またはモデルナ製接種の場合、オミクロン株に対する発症予防効果は3回目投与2~4週後に約60~70%となり、5~9週間後には約50~60%だった。
・1~2回目をファイザー製、3回目にファイザー製またはモデルナ製接種の場合、オミクロン株に対する発症予防効果は3回目投与2~4週後に約65~75%となり、5~9週間後には約55~70%だった。
オミクロン株感染者の入院に対するワクチン有効率は?(回数・経過期間ごと)
オミクロン株感染による症候性COVID-19入院に対するワクチン有効率(VE)が推定された。ワクチンの種類を問わず(全種類の統合データ)、接種回数と経過期間ごとのワクチンによる入院予防効果は以下の通り:
・1回目接種後≧4週間:52%
・2回目接種後2~24週間:72%
・2回目接種後≧25週間:52%
・3回目接種後≧2週間:88%
オミクロン株による入院リスク、ワクチン接種状況による違いは?
入院リスクの評価には、2021年11月22日~12月26日までに英国で発生したオミクロン株感染52万8,176例とデルタ株感染57万3,012例のデータが使用された。うちオミクロン株感染3,019例とデルタ株感染1万3,579例が、検体採取から14日以内に救急受診または入院していた。
ワクチン接種状況ごとの、陽性後14日以内の救急受診・入院に対するハザード比(HR)は以下の通り(未接種/1回目のワクチン接種から<28日のHR1.00を対照として):
1回目のワクチン接種から≧28日
オミクロン株:HR1.02(95%CI:0.72~1.44)/デルタ株:HR 0.42(95%CI:0.36~0.48)
2回目のワクチン接種から≧14日
オミクロン株:HR0.35(95%CI:0.29~0.43)/デルタ株:HR 0.18(95%CI:0.17~0.19)
3回目のワクチン接種から≧14日
オミクロン株:HR0.19(95%CI:0.15~0.23)/デルタ株:HR 0.15(95%CI:0.13~0.16)
上記より、オミクロン株感染で入院するリスクは、ワクチン接種を受けていない人と比較して、ワクチンを2回接種した人の方が65%低く、3回のワクチン接種を受けた人の間ではさらに低かった(81%)。なお、これらの分析において併存疾患や重症度は反映されていないことに注意が必要。
(ケアネット 遊佐 なつみ)