抗CGRP(受容体)モノクローナル抗体による片頭痛治療は、患者の健康関連QOLに良い影響を及ぼす。ドイツの治療ガイドラインでは、抗CGRP抗体による治療に奏効後、6~12ヵ月間で治療を中止することが推奨されている。ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のMaria Terhart氏らは、抗CGRP抗体治療中止後3ヵ月間における頭痛特有の一般的な健康関連QOLを評価した。The Journal of Headache and Pain誌2021年12月31日号の報告。
8~12ヵ月間の抗CGRP抗体治療後、予定された治療中止をこれから行う片頭痛患者を対象としたプロスペクティブ縦断的コホート研究を実施した。健康関連QOLの評価は、最後の抗CGRP抗体治療実施時(V1)、8週間後(V2)、16週間後(V3)に行った。頭痛特有の健康関連QOLの評価には、頭痛インパクトテスト(Headache Impact Test-6:HIT-6)を用いた。一般的な健康関連QOLの評価には、EuroQol-5-Dimension-5-Level(ED-5D-5L)およびPCS-12、MCS-12で構成されたSF-12を用いて評価した。3つの評価時点でのアンケート合計スコアの比較には、ノンパラメトリック手法を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者は61例(抗CGRP受容体抗体[エレヌマブ]:29例、抗CGRP抗体[ガルカネズマブまたはフレマネズマブ]:32例)。
・HIT-6合計スコアは、V1で59.69±6.90であったが、V3で3.69±6.21増加しており(p<0.001)、患者の生活に対する頭痛の影響が大きいことが示唆された。
・平均ED-5D-5L合計スコアは、V1の0.85±0.17からV3の-0.07±0.18へ減少していた(p=0.013)。
・SF-12の精神的(MCS-12)および物理的(PCS-12)コンポーネントスコアは、治療中止中に有意な悪化が認められた。V1からV3への変化は、MCS-12スコアで-2.73±9.04減少(p=0.003)、PCS-12スコアで-4.04±7.90減少(p=0.013)であった。
・すべての質問票のスコアに変化が認められたが、MCS-12ではV2ですでに有意な差が認められた。
著者らは「抗CGRP抗体治療中止により、片頭痛患者の頭痛への影響と健康関連QOLの有意な低下が認められた。これらの悪化は、各質問票における最低限の臨床的な影響を上回っており、臨床的な影響が表れていると見なすことができる。抗CGRP抗体の治療中止を行った際には、健康関連QOLをモニタリングすることで、予防治療の再開を決断しやすくなる可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)