日本人双極性障害外来患者における躁病エピソードの予測因子

提供元:ケアネット

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公開日:2022/02/10

 

 双極性障害は、躁症状とうつ症状が繰り返し発現し、心理社会的機能障害を引き起こす精神疾患である。躁状態/軽躁状態エピソードは、人間関係、社会的および経済的活動に影響を及ぼすが、実臨床診断において躁状態/軽躁状態エピソードの予測因子に関するエビデンスは限られている。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、実臨床診断における双極性障害に関するエビデンスを蓄積するため、日本の精神科クリニックにおける双極性障害に関する多施設治療調査(MUSUBI)を実施した。PLOS ONE誌2021年12月31日号の報告。

 日本精神神経科診療所協会に受診した双極性障害患者を対象に質問票による調査を依頼し、176の会員クリニックにおけるレトロスペクティブ医療記録調査を実施した。2016年9~10月の併存疾患、精神状態、治療期間、機能の全体的評価(GAF)スコア、薬理学的治療の詳細などのベースライン時患者特性を抽出した。ベースラインから2017年9~10月の1年間にわたり、躁状態/軽躁状態エピソードの有無を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・調査対象患者数は2,231例で、ベースラインから1年間で躁状態/軽躁状態エピソードが認められた患者は29.1%であった。
・二項ロジスティック回帰分析では、躁状態/軽躁状態エピソードは、ベースライン時のGAFスコアの低下、ラピッドサイクラー、人格障害、双極I型障害、躁状態または混合状態を伴う気分状態と関連していることが明らかとなった。
・薬物乱用も躁状態エピソードのリスク因子であった。
・ベースライン時の抗うつ薬の使用と躁状態/軽躁状態エピソードとの間に有意な関連は認められなかった。

 著者らは「日本の双極性障害外来患者の29.1%は、1年間の間に躁状態/軽躁状態エピソードを経験していた。躁状態/軽躁状態エピソードの予測因子として、GAFスコアの低さ、ラピッドサイクラー、人格障害、双極I型障害、薬物乱用、気分状態が挙げられた。なお、抗うつ薬の使用は、予測因子ではない可能性が示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)