これまでの研究では、腸内細菌叢や微生物代謝産物と認知機能低下との関連が示唆されている。しかし、この関連に対する食事パターンの影響は十分に調査されていない。国立長寿医療研究センターの佐治 直樹氏らは、日本食の順守や腸内細菌叢と認知機能低下との関連を評価した。さらに、日本食事スコアの3タイプ(JDI9[米、味噌、魚介類、緑黄色野菜、海藻類、漬物、緑茶、牛肉・豚肉、コーヒー]、JDI12[JDI9+大豆・大豆製品、果物、きのこ]、rJDI12[JDI12改訂版のJDI])について評価し、認知機能や腸内細菌叢と関連性を調査した。Nutrition誌2022年2月号の報告。
病院ベースのプロスペクティブコホート研究より抽出したデータを用いて、横断的サブ解析を実施した。対象者の人口統計学的特性、食事パターン、リスク因子、認知機能、脳画像、腸内細菌叢、微生物代謝産物について評価を行った。これまでの研究に基づき、JDI9、JDI12、rJDI12を定義した。JDIスコア、認知機能、腸内細菌叢、微生物代謝産物との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・対象者85例(女性の割合:61%、平均年齢:74.6±7.4歳)のデータを分析した。
・非認知症患者は、認知症患者と比較し、JDI12の魚介類(64.5% vs.39.1%、p=0.048)、きのこ(61.3% vs.30.4%、p=0.015)、大豆・大豆製品(62.9% vs.30.4%、p=0.013)、コーヒー(71.0% vs.43.5%、p=0.024)を摂取する割合が高かった。
・認知症患者は、非認知症患者よりもJDIスコア(中央値)が低かった。
【JDI9】認知症患者5 vs.非認知症患者7(p=0.049)
【JDI12】認知症患者7 vs.非認知症患者8(p=0.017)
【rJDI12】認知症患者7 vs.非認知症患者9(p=0.006)
著者らは「伝統的な日本食を順守すると、認知機能低下を予防できることが示唆された。これは、腸内微生物の代謝産物の濃度の低さと関連している傾向があることが明らかとなった」としている。
(鷹野 敦夫)