HER2+乳がん2次治療へのT-DXd vs.T-DM1、アジア人サブグループ解析結果(DESTINY-Breast03)/日本臨床腫瘍学会 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2022/02/18 DESTINY-Breast03試験の中間解析結果がESMO2021で発表され、トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移を有する乳がん(mBC)患者に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)がトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。同試験のアジア人サブグループ解析結果を、韓国・Seoul National University HospitalのSeock-Ah Im氏が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。 [DESTINY-Breast03試験] ・対象:トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2+mBC患者 ・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付け T-DXd群:3週間間隔で5.4mg/kg投与 261例 T-DM1群:3週間間隔で3.6mg/kg投与 263例 ・層別化因子:ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無 ・評価項目: [主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]OS、BICRおよび治験実施医師評価による客観的奏効率(ORR)、BICR評価による奏効期間(DOR)、治験実施医師評価によるPFS、安全性 主な結果は以下のとおり。 ・2021年5月21日までに15カ国から524例が無作為化され、うち309例(59%、T-DXd 群149例、T-DM1群160例)がアジアからの参加者だった(日本人は68例)。 ・アジア人サブグループにおける追跡期間中央値は、T-DXd 群16.5ヵ月、T-DM1群15.8ヵ月だった。 ・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はT-DXd 群54.0歳vs.T-DM1群53.4歳、HER2status 3+が92.6% vs.88.8%、ホルモン受容体陽性が45.6% vs.46.3%、脳転移有が16.1% vs.18.8%、内臓転移有が76.5% vs.72.5%だった。 ・治療歴については全体集団と大きな差はみられなかったが、4ライン以上の治療歴を有する患者、抗HER2TKIによる治療歴を有する患者がアジア人サブグループで多かった。 ・主要評価項目のBICR評価によるPFS中央値は、T-Dxd群NE(95%信頼区間[CI]:16.8~NE) vs.T-DM1群5.6ヵ月(4.1~6.9)、ハザード比(HR):0.27(0.20~0.38)だった(全体集団ではNE vs. 6.8ヵ月、HR:0.28、p=7.8×10-22)。12ヵ月時点でのPFS率はT-Dxd群72.6%(64.3~79.3)vs.T-DM1群26.0%(18.6~34.1)となり(全体集団では75.8% vs. 34.1%)、アジア人においてもT-Dxdの有用性が示された。 ・副次評価項目の治験実施医師評価によるPFS中央値は、T-Dxd群25.1ヵ月(20.9~NE)vs.T-DM1群7.0ヵ月(5.5~8.1)、HR:0.26(0.19~0.37)だった(全体集団では25.1ヵ月vs. 7.2ヵ月、HR:0.27、p=6.5×10-24)。 ・OSデータは未成熟だが、T-Dxd群NE(19.9~NE)vs.T-DM1群NE(17.4~NE)、HR:0.51(0.25~1.02)だった(全体集団ではNE vs. NE、HR:0.56、p=0.007172)。 ・ORRはT-Dxd群76.5% vs.T-DM1群31.3%(全体集団では79.7% vs.34.2%)。 ・Grade3以上の治療関連有害事象はT-Dxd群46.9% vs.T-DM1群46.5%で発現し、全体集団(45.1% vs. 39.8%)と概ね一致していた。 ・T-Dxd群のGrade3以上の治療関連有害事象として多かったのは好中球減少症(24.5%)、血小板減少症(11.6%)、白血球減少症(9.5%)、吐き気(8.2%)だった(全体集団ではそれぞれ19.1%、7.0%、6.6%、5.8%)。 ・T-Dxd群でのILDは16例(10.9%)報告されたが(全体集団では10.5%)、Grade4以上の報告はない。日本人集団についてみると、Grade1~2のILD が8例(22.2%)報告されている。 Im氏は、全体集団と同様にアジア人集団においても、T-DXdはT-DM1と比較して臨床的に意味のあるPFSベネフィットを示したとし、安全性プロファイルについても全体集団と一致していたと結論付けている。一方で、日本人集団において全体集団およびアジア人集団と比較するとILDの報告が多い傾向がみられた点に触れ、Grade4以上は報告されていないものの、ILDについては注意深いモニタリングが必要としている。 (ケアネット 遊佐 なつみ) 参考文献・参考サイトはこちら DESTINY-Breast03試験(Clinical Trials.gov) 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 HR0.28、T-DXdがHER2+乳がん2次治療でT-DM1に対しPFS改善(DESTINY-Breast03)/ESMO2021 医療一般(2021/09/22) トラスツズマブ エムタンシン既治療のHER2陽性転移乳がんに対するtrastuzumab deruxtecan(DESTINY-Breast01):単アームの第II相試験で奏効率は60.9%(解説:下村 昭彦 氏)-1184 CLEAR!ジャーナル四天王(2020/02/10) HER2+進行乳がんへのT-DXdによるILDの特徴/ESMO BREAST 2021 医療一般(2021/05/13) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 複雑CAD併存の重症AS、FFRガイド下PCI+TAVI vs.SAVR+CABG/Lancet(2024/12/20) 慢性心血管系薬のアドヒアランス不良、リマインドメッセージでは改善せず/JAMA(2024/12/20) “Real-world”での高齢者に対するRSVワクチンの効果(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)(2024/12/20) 切除不能肝細胞がん、アテゾ+ベバがTACEの代替となる可能性/ESMO Asia2024(2024/12/20) EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のアジア人データ(FLAURA2)/ESMO Asia2024(2024/12/20) 進行・再発子宮体がんの新たな治療選択肢/AZ(2024/12/20) 導入療法後に病勢進行のないHR+/HER2+転移乳がん1次治療、パルボシクリブ追加でPFS改善(PATINA)/SABCS2024(2024/12/20) 統合失調症発症後20年間における抗精神病薬使用の変化(2024/12/20) SGLT2阻害薬はがん発症を減らすか~日本の大規模疫学データ(2024/12/20) [ あわせて読みたい ] 医師向けガイドライン改訂に対応した患者ガイドブック2021年版~日本肺癌学会【肺がんインタビュー】 第72回(2021/12/10) 血液がん特集インデックス(2021/11/18) 総合内科専門医試験オールスターレクチャー 血液(2021/04/20) 脳血管内治療STANDARD(2020/12/10) Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 医療関連感染症編(2020/02/10) 第4回 現代の「医療マンガ」とはどうあるべきか(2019/12/27)
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