境界性パーソナリティ障害(BPD)に対する心理療法の有効性は、最新のコクランレビューにより示唆されている。ドイツ・マインツ大学のJutta M. Stoffers-Winterling氏らは、単独および追加療法による心理療法の有効性をより簡潔に評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年1月28日号の報告。
成人サンプルに対する積極的な治療と非特異的な対照条件との比較に焦点を当て、2020年に実施されたコクランレビューと同様の方法で検討を行った。単独またはいくつかの治療コンポーネントの1つとして個別の心理療法を含む単独療法と既存のBPD治療を補完するために行った追加療法について、それぞれ分析した。主要アウトカムは、BPDの重症度、自傷行為、自殺関連アウトカム、心理社会的機能とした。副次的アウトカムは、その他のBPD診断基準、抑うつ症状、消耗(attrition)とした。
主な結果は以下のとおり。
・ランダム化比較試験31件より、1,870例が抽出された。
・単独療法の中で、統計学的に有意な効果が観察されたのは、以下のとおりであった。
【弁証法的行動療法(DBT)】(確実性:低)
●自傷行為(標準化平均差[SMD]:-0.54、p=0.006)
●心理社会的機能(SMD:-0.51、p=0.01)
【メンタライゼーションに基づく治療】(確実性:低)
●自傷行為(リスク比:0.51、p<0.0007)
●自殺関連アウトカム(リスク比:0.10、p<0.0001)
・併用療法の中で、統計学的に有意な効果が観察されたのは、以下のとおりであった。
【DBTスキルトレーニング】(確実性:中)
●BPDの重症度(SMD:-0.66、p=0.002)
●心理社会的機能(SMD:-0.45、p=0.002)
【感情調節グループセラピー】(確実性:低)
●BPDの重症度(平均差:-8.49、p<0.00001)
【マニュアルアシスト認知療法】(確実性:低)
●自傷行為(平均差:-3.03、p=0.03)
●自殺関連アウトカム(SMD:-0.96、p=0.005)
【STEPPS療法】(確実性:低)
●BPDの重症度(SMD:-0.48、p=0.002)
著者らは「BPD患者に対する心理療法的介入は、有用であると結論付ける合理的なエビデンスが示唆された。調査結果の確実性を高めるためにも、今後の複製研究が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)