PTSDに対する心理療法のための治療同盟~メタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2021/08/18

 

 治療を成功させるために、治療同盟は有用な要素である。恐怖、不信、回避などの症状を有するPTSD患者では、治療同盟がとくに重要であるにもかかわらず、包括的なシステマティックレビューによる検討は、行われていなかった。英国・マンチェスター大学のRuth Howard氏らは、PTSD患者における治療同盟を予測できる可能性のある因子および治療同盟がアウトカムに及ぼす影響について調査を行った。Clinical Psychology & Psychotherapy誌オンライン版2021年7月8日号の報告。

 PRISMAガイドラインの優先報告項目に従って34件の適格研究が抽出され、研究の質を評価した。治療同盟の予測因子を特定するため、narrative synthesisを行った。PTSDにおける治療同盟と治療アウトカムとの関連を評価するため、12件の研究をメタ解析に含めた。

 主な結果は以下のとおり。

・アタッチメント、対処方法、心理学的因子を含むいくつかの変数は、治療同盟を予測する可能性があることが報告されていた。
・治療変数は、治療同盟の予測因子ではなかった。
・対面療法および遠隔療法のいずれにおいても、治療同盟はPTSDの治療アウトカムの有意な予測因子であった(集計されたエフェクトサイズ:r=-0.34)。
・本研究の限界として、研究対象が査読済みの英語文献に限定されていた点、研究の質が低~中程度と評価(本研究領域では選択バイアスが起こりやすい)された点が挙げられる。

 著者らは「PTSD患者における治療同盟は、対面療法、遠隔療法のいずれにおいても治療アウトカムの予測因子であり、その影響は、他の疾患集団と同等以上であると考えられる。このことは、トラウマを抱えた患者に対応するうえで、非常に重要である。PTSD治療における治療同盟を予測する因子を特定するためには、さらなる研究が必要とされる」としている。

(鷹野 敦夫)