注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意および/または多動性・衝動性の持続的なパターンを特徴とする神経発達障害である。ADHDは、主に前頭前野のドパミン(DA)およびノルエピネフリン(NE)回路の異常から発生すると考えられている。ADHD治療薬の副作用に対する懸念やADHDの診断率の向上により、薬理学的アプローチの代替/補完的な介入が求められている。ここ数年、ADHD治療に対するカフェイン摂取の潜在的な影響に関する動物実験レベルの研究は蓄積されているが、最新のエビデンスに基づくシステマティックレビューは十分に行われていなかった。スペイン・カタルーニャオベルタ大学のJavier C. Vazquez氏らは、前臨床レベルでのADHD治療に対するカフェインの影響について、システマティックレビューを実施した。Nutrients誌2022年2月10日号の報告。
カフェイン摂取はADHD治療で注意力の向上や学習に対する改善が期待できる
2021年9月1日時点で入手可能な前臨床レベルでのADHD治療に対するカフェインの影響を検討したエビデンスを抽出し、PRISMAガイドラインに基づくシステマティックレビューを実施した。
ADHD治療に対するカフェインの影響についてのシステマティックレビューの主な結果は以下のとおり。
・カフェイン摂取はADHD治療で、血圧や体重に影響を及ぼすことなく、注意力の向上、学習、記憶、嗅覚の識別に対する改善が期待できる。
・これらの結果は、神経・分子レベルで支持されている。
・しかし、多動性・衝動性の調整に対するADHD治療のカフェインの影響に関しては、矛盾した結果が得られており、さらなる解明が必要とされる。
著者らは「これら動物実験レベルで確認されたADHDに対するカフェインの影響は、とくに青年期ADHD治療に流用される可能性が示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)