抗精神病薬の選択戦略

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/28

 

 抗精神病薬の選択戦略と精神疾患患者の治療順守における臨床的および社会心理学的因子との関連について、ロシア・Bekhterev National Research Center for Psychiatry and NeurologyのM. Yu Sorokin氏らが調査を行った。Zhurnal Nevrologii i Psikhiatrii Imeni S.S. Korsakova誌2022年(122[1. Vyp. 2])号の報告。

 本試験には、統合失調症スペクトラム障害(F20-29:67%)、気分(感情)障害(F30-39:15%)、神経症性障害およびパーソナリティ障害(F40-48+F60-69:9%)、器質性精神障害(F00-09:9%)の入院患者83例を含めた。患者の主観的な重症度を評価するVAS、locus control test、精神障がい者の内面化したスティグマ尺度(ISMI)、Treatment motivation assessment questionnaire(TMAQ)、Medication Compliance Scale(MCS)、簡易精神症状評価尺度(BPRS)、陰性症状評価尺度(SANS)、機能の全体的評定(GAF)尺度を用いて評価した。分析には、分散分析(p≦0.05)、エフェクトサイズ(Cohen's d/Cramer's V)を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・使用された抗精神病薬の選択基準は、陽性症状、陰性症状、社会不適応性、自殺傾向、再発に依存していなかった。
・外来での抗精神病薬の併用に対して、社会人口統計学的な差異との関連が認められた。
 ●失敗体験における内面性の高さ(エフェクトサイズ:0.98)
 ●自己スティグマ(同:0.94)
 ●精神医学的固定観念の強さ(同:1.03)
 ●社会的自己隔離(同:1.08)
・入院での非定型抗精神病薬使用との関連が認められた因子は以下のとおりであった。
 ●患者の主観的重症度が軽度(エフェクトサイズ:0.7)
 ●医師との積極的な協力関係(同:1.08)
 ●成功体験における内面性の高さ(同:0.99)
 ●精神医学的固定観念の弱さ(同:1.19)
 ●社会的自己隔離(同:1.58)
・持続性注射剤を選択した患者は、主に中等教育以上を受けていた(エフェクトサイズ:0.34)。

 著者らは「選択された抗精神病薬の種類や剤型は、臨床的というよりも、患者の社会的および心理的因子と関連していた。持続性注射剤を含む非定型抗精神病薬の使用は、治療アドヒアランスのみならず、とくに治療に対する患者の動機付けにおける良好なプロファイルとも関連している」としている。

(鷹野 敦夫)