尿路上皮がんニボルマブのアジュバントに期待/小野・BMS

提供元:ケアネット

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公開日:2022/04/20

 

 ニボルマブに尿路上皮がんに対する術後補助療法の適応が追加された。なかでも、筋層浸潤性尿路上皮がん(MIUC)の術後補助療法には課題が残っており、ニボルマブの適応追加に期待が寄せられている。弘前大学 泌尿器科学講座の大山力氏は、小野薬品/ブリストル・マイヤーズ スクイブ共催プレスセミナーにて、MIUC治療のアンメット・ニーズとニボルマブ補助療法の位置付けについて紹介した。

筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)は手術+術前補助療法(NAC)で治療成績向上

 尿路上皮がんの90%は膀胱がん、残りを腎盂がんと尿管がんが2対1で占める。進行度からみると、腫瘍が固有筋層におよぶMIUCは、尿路上皮がんの3割である。MIUCは拡散リスクが高く、急速に生命を脅かす1)

 MIUCの大部分を占める筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の標準治療は膀胱全摘である。膀胱全摘によりMIBCの5年生存率は約50%まで改善した。

 そのあと50年にわたり大きな変化は見られなかったが、NACを加えると、治療成績は向上した。M-VAC療法によるNACを評価した日本のJCOG0209試験の5年生存率は70%を超える2)
※M-VAC療法:メトトレキサート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチンの併用レジメン

筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)のNAC実施例では再発に有効な手段がない

 NACの導入でMIBCの再発は減った。しかし、NAC実施例(NAC+)の術後再発はNACを実施しなかった例(NAC−)よりも早期に起こる。さらに、NAC+例での再発は化学療法抵抗性であることが弘前大学の研究でも示されている。NAC+例が再発すると、現状では有効な手段がない状況であった。

ニボルマブによる術後補助療法承認の意義

 上記の臨床課題が残る中、ニボルマブのMIUCのへの術後補助療法の有用性を評価するCheckMate−274試験が行われた。CheckMate−274試験の対象は根治的切除術を受けたMIUC患者で、NAC実施例も含まれる。この試験でのニボルマブ群の無病生存期間(DFS)は20.76ヵ月で、10.84ヵ月のプラセボ群と比べ有意に再発までの期間を延長した([ハザード比]HR:0.70、p=0.0008)。PD-L1≦1%の症例ではHR0.55、とさらに良好な結果を示す(p=0.0005)。

 MIUCの切除後再発例は予後不良であり治療手段がない。そのため、再発を抑えることが重要だ、と大山氏は述べる。ニボルマブの術後補助療法は、DFSを改善し再発を抑える有望な選択肢として期待される。

(ケアネット 細田 雅之)

1)NICE Guideline, No. 2 Bladder Cancer Diagnosis and Management
2)Kitamura H,et al.Ann Oncol. 2014;25:1192-1198.