一日の身体活動(PA)や中等度以上の活発な身体活動(MVPA)と認知症との関連を明らかにするため、国立がん研究センターの井平 光氏らは、大規模長期フォローアップ・プロスペクティブ研究を実施した。その結果、とくに男性において休日のMVPAレベルの高さは、認知症リスクの低下に寄与する可能性が示唆された。JAMA Network Open誌2022年3月1日号の報告。
本プロスペクティブコホート研究は、2000~03年に国内8地域で行われた多目的コホート研究(JPHC Study)の認知障害プロスペクティブ研究(Prospective Disabling Dementia Study)で収集されたデータを用いて実施された。参加対象者は、認知障害に関する利用可能なフォローアップデータを有する成人50~79歳。毎日の総PA、総MVPA、休日のMVPAのデータを収集し、データ分析は2019年2月~2021年7月に行われた。主要アウトカムは、全国介護保険制度に基づく2006~16年(確認期間)の認知障害発生率とした。毎日の総PA、総MVPA、休日のMVPAに関連する認知症リスクは、多変量調整ハザード比(aHR)を用いて算出した。
主な結果は以下のとおり。
・参加対象者4万3,896人(平均年齢:61.0±7.5歳、女性の割合:53.9%[2万3,659人])のうち、確認期間にケアを必要とする認知症と新たに診断された人は5,010人(発生までの期間:9.5±2.8年)であった。
・総PA量の最も多い群は、最も少ない群と比較し、認知症リスクが男女ともに低かった。
・総MVPAおよび休日のMVPAにおいても、同様の関連が認められた。
●総PA
【男性】aHR:0.75、95%CI:0.66~0.85、P for trend<0.001
【女性】aHR:0.75、95%CI:0.67~0.84、P for trend<0.001
●総MVPA
【男性】aHR:0.74、95%CI:0.65~0.84、P for trend<0.001
【女性】aHR:0.74、95%CI:0.66~0.83、P for trend<0.001
●休日のMVPA
【男性】aHR:0.59、95%CI:0.53~0.67、P for trend<0.001
【女性】aHR:0.70、95%CI:0.63~0.78、P for trend<0.001
・認知症診断までの期間が7年以内の男性、8年以内の女性を除くと、これらの関連は消失した。
【男性】aHR:0.93、95%CI:0.77~1.12
【女性】aHR:0.86、95%CI:0.71~1.04
・認知症診断までの期間が9年以内の人を除外した後、休日のMVPA量の最も多い群における最も少ない群と比較した認知症リスクは、男性で有意に低いままであった(aHR:0.72、95%CI:0.56~0.92、P for trend=0.004)。
(鷹野 敦夫)