自然災害は、メンタルヘルスに重大な影響を及ぼす。2018年7月の西日本豪雨は、日本で発生した最大級の洪水災害の1つである。広島大学の岡崎 悠治氏らは、災害前後のベンゾジアゼピン処方の変化について評価を行った。その結果、被災者における災害後のベンゾジアゼピン処方率が上昇し、その影響は1年以上継続していたことを報告した。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2022年4月26日号の報告。
西日本豪雨による洪水被災地における、2017年7月~2019年6月のレセプト情報データベースに基づき、レトロスペクティブコホート研究を実施した。被災地域住民を、地方自治体の認定により被災者と非被災者に分類した。次に、災害前のベンゾジアゼピン使用状況に基づき、非使用者、頓服使用者、継続使用者の3群に分類した。災害前後のベンゾジアゼピン処方状況を比較し、被災地域住民における災害の影響を推定するため、ロジスティック回帰モデルを用いた差分の差分法(DID)分析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・被災地域住民500万129人中、3万1,235人が被災者であった。
・災害前後のベンゾジアゼピン平均処方率は、被災者で11.3%から11.8%へ上昇し、非被災者では8.3%から7.9%に低下した。
・DID分析では、被災者のベンゾジアゼピン処方は、災害直後から有意な上昇が認められ(調整オッズ比:1.07、95%CI:1.05~1.11)、その影響は災害後1年間継続していた(同:1.20、95%CI:1.16~1.24)。
(鷹野 敦夫)