統合失調症治療では、主に抗精神病薬が用いられており、急性期症状の軽減に有効であるとされている。2012年に公表された現在のレビューのオリジナルバージョンでは、統合失調症または統合失調症様障害の患者に対する抗精神病薬の再発予防効果について、ランダム化試験のエビデンスに基づき検討が行われた。イタリア・ASST Spedali CiviliのAnna Ceraso氏らは、寛解とリカバリー率、社会的機能やQOLの変化に着目したいくつかの新たな調査結果に焦点を当て、レビューの更新を行った。その結果、統合失調症患者に対する抗精神病薬による維持療法は、再発および再入院を予防するだけでなく、患者のQOLや機能、持続的な寛解にもベネフィットをもたらすことが示唆された。著者らは、抗精神病薬によるこれらの肯定的な効果は、副作用を背景として比較検討する必要があると報告している。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2022年5月12日号の報告。
レビューの更新には、1959~2017年に公表された75件のランダム化比較試験(RCT)より、9,145例を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・バイアスの潜在的ないくつかの原因により全体的な質は制限されたが、統合失調症の維持療法に対する抗精神病薬の有効性は、一連の感度分析に対して明確かつ堅牢であった。
・抗精神病薬は、プラセボと比較し、1年後の再発予防(薬物療法:24%、プラセボ:61%、30 RCT、4,249例、RR=0.38、95%CI:0.32~0.45)および入院率減少(薬物療法:7%、プラセボ:18%、21 RCT、3,558件、RR=0.43、95%CI:0.32~0.57)に有効であった。
・抗精神病薬治療患者では、QOL(7 RCT、1,573例、SMD=-0.32、95%CI:-0.57~-0.07)および社会的機能(15 RCT、3,588例、SMD=-0.43、95%CI:-0.53~-0.34)も良好であった。
・少数の研究データに基づくものの、維持療法は症状寛解達成率(薬物療法:53%、プラセボ:31%、7 RCT、867例、RR=1.73、95%CI:1.20~2.48)を高め、その効果を6ヵ月間維持(薬物療法:36%、プラセボ:26%、8 RCT、1,807例、RR=1.67、95%CI:1.28~2.19)することが示唆された。
・リカバリー率に関するデータはなかった。
・抗精神病薬治療患者では、運動障害(薬物療法:14%、プラセボ:8%、29 RCT、5,276例、RR=1.52、95%CI:1.25~1.85)や体重増加(薬物療法:9%、プラセボ:6%、19 RCT、4,767例、RR=1.69、95%CI:1.21~2.35、NNTH=25、95%CI:20~50)などの副作用が認められる割合が高かった。
(鷹野 敦夫)