術前化学療法におけるHER2低発現乳がんの特徴

提供元:ケアネット

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公開日:2022/08/15

 

 術前化学療法におけるHER2低発現乳がんの臨床像、病理学的完全奏効(pCR)、予後について後ろ向きに評価したところ、ホルモン受容体(HR)の有無により臨床像や治療への奏効が異なることが示された。中国・鄭州大学人民病院のYingbo Shao氏らが、Annals of Surgical Oncology誌オンライン版2022年8月6日号で報告。

HER2の発現がHR+乳がんにおける病理学的完全奏効の独立した予測因子

 本研究では、2017年1月~2019年12月に術前化学療法を受けたHER2陰性乳がん患者314例をHER2低発現患者とHER2ゼロ患者の2群に分け、後ろ向きに評価した。

 術前化学療法におけるHER2低発現乳がんの臨床像、病理学的完全奏効、予後について評価した主な結果は以下のとおり。

・HR陽性(HR+)乳がん患者におけるHER2低発現患者の割合は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)における割合より高かった。
・HR+乳がん患者において、HER2低発現患者はHER2ゼロ患者に比べてリンパ節転移が少なく(p=0.023)、Stageが早期だった(p=0.015)。ただし、TNBC患者においてはHER2低発現患者のStageが進行していた(p=0.028)。
・病理学的完全奏効をypTis/0ypN0と定義した場合、コホート全体、HR+乳がん、TNBCで、HER2低発現患者とHER2ゼロ患者の病理学的完全奏効率に差はなかった。しかし、病理学的完全奏効をypT0ypN0と定義した場合の病理学的完全奏効率は、コホート全体(24.3% vs.36.4%、p=0.032)およびHR+患者(18.7% vs.32.1%、p=0.035)において、HER2低発現患者においてHER2ゼロ患者より有意に低かった。
・多変量解析により、HER2の発現(低発現vs.ゼロ) が、HR+乳がんにおける病理学的完全奏効の独立した予測因子であることが示された(p=0.013)。
・コホート全体、HR+乳がん、TNBCにおいて、HER2低発現患者と HER2ゼロ患者で、3年無病生存期間と全生存期間に統計学的有意差は認められなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)