6つの食習慣と肝細胞がんリスクの関連:メンデルランダム化研究

提供元:ケアネット

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公開日:2022/10/24

 

 飲酒経験などの食習慣と肝細胞がん(HCC)リスクとの間に、潜在的な因果関係があることが報告された。Hepatology Communications誌2022年8月号掲載の報告。

 食生活はHCCと関連があると報告されているが、因果関係があるかどうかは依然として不明である。中国・香港中文大学のYunyang Deng氏らは、東アジア人の集団においてメンデルランダム化を用いた、食生活とHCCリスクの潜在的な因果関係の探索を目的とした研究を実施した。

※メンデルランダム化(MR)は、因果関係を推論するための研究デザインとして導入された。MR研究の多くは、遺伝的に予測される曝露とアウトカムとの関連を評価するために、曝露と有意に関連する遺伝子変異を操作変数(IV)として使用している。遺伝子変異は親から子へランダムに遺伝するため、潜在的な交絡因子や逆の因果関係による影響を受けにくいとされ、MRに基づく研究デザインは、無作為化比較試験(RCT)では調査できない多くの曝露を調査することが可能である。

 本研究はバイオバンク・ジャパンのデータを用いて実施され、2003~18年にかけて20~89歳までの20万人を超える参加者が募集された。そのうち、飲酒経験(16万5,084人)、アルコール摂取(5万8,610人)、コーヒー摂取(15万2,634人)、茶の摂取(15万2,653人)、牛乳の摂取(15万2,965人)およびヨーグルト摂取(15万2,097人)という6つの食習慣に関する要約レベルのゲノムワイド関連解析データが用いられた。また、HCC(1,866症例、対照19万5,745人)のデータも入手した。曝露と関連する一塩基多型(SNP)(p<5×10-8)を操作変数(IV)として選択し、飲酒経験、アルコール摂取、コーヒー摂取について、5つ、2つ、6つのSNPが同定された。茶、牛乳、ヨーグルトの摂取については、1つのSNPが用いられた。オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は、逆分散加重(SNPが2つ以上のIVの場合)またはWald比(SNPが1つのIVの場合)により算出された。

 主な結果は以下のとおり。

・飲酒経験(OR:1.11、95%CI:1.05~1.18、p<0.001)およびアルコール摂取(OR:1.57、95%CI:1.32~1.86、p<0.001)はHCCリスクと正の相関があった。逆に、コーヒー摂取はHCCリスクと逆相関していた(OR:0.69、95%CI:0.53~0.90、p=0.007)。

・茶、牛乳、ヨーグルトの摂取についても同様の逆相関が認められ、OR(95%CI)はそれぞれ0.11(0.05~0.26)、0.18(0.09~0.34)、0.18(0.09~0.34)であった(すべてp<0.001)。

 6つの食習慣とHCCリスクとの間には、潜在的な因果関係が認められた。著者らは、食習慣がHCCに与える影響に関するエビデンスの提供は、臨床診療に役立つものであると述べている。

(ケアネット 木村 まゆみ)