心血管疾患(CVD)リスクに対して、双極性障害(BD)患者の性差による影響を検討した報告は、これまでほとんどなかった。カナダ・トロント大学のAbigail Ortiz氏らは、UKバイオバンクのデータを用いて、CVDとBDの関連性に対する性別固有の影響について検討を行った。その結果、CVDとBDの関連性に男女間で違いが認められた。このことから著者らは、CVDのリスク推定ツールに性別と精神疾患を組み込むことで、BD 患者のCVDスクリーニングや適時の治療を改善できるとしている。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2022年9月23日号の報告。
UKバイオバンクに登録されたBD患者293例、精神医学的に健康な対照者25万7,380例を対象に横断研究を実施した。7つのCVD(冠動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、心房細動、心不全、脳卒中、本態性高血圧)および4つの心血管バイオマーカー(動脈硬化指数、LDL、CRP、HbA1c)について男女間のオッズ比を比較した。
主な結果は以下のとおり。
・年齢で調整した後、BDと冠動脈疾患、心不全、本態性高血圧の発生率に関連が認められ、この関連性は男性よりも女性のほうが2~3倍強く、各診断に性別の有意な相互作用が認められた。
・人種、教育、収入、喫煙状況で調整した後においても、これらの関連性は有意なままであった。
・潜在的な交絡因子で調整した後、性別といずれの心血管バイオマーカーとの間にも有意な関連性は認められなかった。
・本研究の限界として、これらの分析において、BD治療による影響を除外することはできなかったことが挙げられる。
(鷹野 敦夫)