家族性腺腫性ポリポーシス、新たな治療戦略を日本で開発(J-FAPP Study III)

提供元:ケアネット

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公開日:2022/11/04

 

 京都府立医科大学の石川 秀樹氏らが大腸がんの超高危険群である家族性大腸腺腫症(FAP)患者に対し、予防のための内視鏡的積極的摘除術を世界で初めて開発したことがEndoscopy誌2022年10月10日号オンライン版に掲載された。

 結腸全摘は、FAPの標準治療であるにもかかわらず、若年層のFAP患者が手術を延期したり、手術を拒否したりするケースもあるという。そこで、同氏らはFAP にきわめて多発する大腸ポリープのダウンステージングを目的とする積極的な内視鏡的摘除(IDP)の有効性を評価することを目的に内視鏡的積極的摘除術の多施設共同介入試験(J-FAPP Study III)を実施した。本試験は22施設で実施した単群介入研究で、参加者は2012年11月24日~2014年9月25日の間に登録。結腸切除術を受けていない、または結腸切除術を受けたが大腸が10cm以上残っている16歳以上で、100個のポリープがあったFAP患者を対象とした。IDPでは、10mm以上の大腸ポリープが摘除され、続いて5mm以上のポリープが摘除された。主要評価項目は5年間の介入期間中の結腸切除術の有無、副次評価項目は内視鏡による穿孔/出血、結腸直腸がんの発生、内視鏡治療に適さない腫瘍の発生、結腸直腸がんおよびその他の原因による死亡だった。

 主な結果は以下のとおり。

・ 222例が本試験に適格だった。そのうち結腸切除を受けていない(非結腸切除群)のは166例、回腸直腸吻合を伴う結腸亜全摘術(IRA)を受けたのは46例、部分的な結腸切除術を受けていたのは10例だった。
・介入期間中、5例(2.3%、95%信頼区間[CI]:0.74~5.18)が結腸切除術を受け、そのうち4例は非結腸切除群から、1例は結腸切除後群だった。
・介入期間中、3例(1.4%)が死亡したが、死因からFAPとの因果関係はないと推測された。
・結腸切除なしの5年間の介入期間の完了は、結腸切除を受けていない者では150/166例(90.4%、95%CI:84.8~94.4)、以前に結腸切除を受けた者では47/56例(83.9%、95 %CI:71.7~92.4)だった。

 本研究を踏まえ研究者らは、軽~中等度のFAP患者におけるIDPは、結腸切除術を実施せずに結腸直腸がんを予防する有用な手段となる可能性があることを示した。ただし、IDPの長期間の有効性はまだ不明であり多くの患者が結腸切除術を実施する必要がある可能性は残されたままである。

(ケアネット 土井 舞子)

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