抗精神病薬の使用が初回エピソード非感情性精神病(nonaffective psychosis)の就労障害低下と関連しているかを明らかにするため、カナダ・オタワ大学のMarco Solmi氏らは、検討を行った。その結果、初回エピソード非感情性精神病に対する抗精神病薬(とくに長時間作用型注射剤)の使用は、未使用の場合と比較し、就労障害リスクを30~50%低下させ、この影響は初回診断5年超でも継続していることを報告した。このことから著者らは、非感情性精神病の初回エピソード後、できるだけ早期に抗精神病薬治療を開始することの意義を強調した。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年10月6日号の報告。
16~45歳の初回エピソード非感情性精神病患者2万1,551例を対象に、抗精神病薬の使用と病気による欠勤または障害年金リスクとの関連を評価するため、最長11年間(2006~16年)のフォローアップ期間を設けたスウェーデン全国コホート研究を実施した。被験者内分析を採用し、選択バイアスを除外するため各個人自身を対照群とし、時間により変化する因子で調整した後、層別Cox回帰モデルを用いて分析した。主要アウトカムは、就労障害(病気による欠勤または障害年金)とし、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・全体として、初回エピソード非感情性精神病患者の45.9%に就労障害が認められた(フォローアップ期間中央値:4.8年)。
・抗精神病薬使用患者は、未使用患者と比較し、就労障害リスクが低かった(aHR:0.65、95%CI:0.59~0.72)。
・調整済みHRが最も低かった因子は、長時間作用型注射剤抗精神病薬の使用(aHR:0.46、95%CI:0.34~0.62)、経口アリピプラゾールの使用(aHR:0.68、95%CI:0.56~0.82)、経口オランザピンの使用(aHR:0.68、95%CI:0.59~0.78)であった。
・長時間作用型注射剤の使用は、最も使用頻度の高かった経口抗精神病薬であるオランザピンと比較し、就労障害リスクが低かった(aHR:0.68、95%CI:0.50~0.94)。
・調整済みHRは、診断から2年未満、2~5年、5年超の場合で同様であった。
(鷹野 敦夫)