東京大学医科学研究所の河岡 義裕氏らの研究グループは、新型コロナウイルスのオミクロン株BA.4/5について、感染した患者の臨床検体からウイルスを分離し、その性状についてハムスターを用いてin vivoで評価した。デルタ株およびBA.2と比較したところ、BA.4およびBA.5のハムスターにおける増殖性と病原性は、いずれもBA.2と同程度であったが、デルタ株と比べると低いことなどが明らかになった。本研究は、東京大学、国立国際医療研究センター、米国ウィスコンシン大学、国立感染症研究所、米国ユタ州立大学の共同で行われ、Nature誌オンライン版11月2日号に掲載された。
主な結果は以下のとおり。
・BA.4およびBA.5をハムスターに感染させたところ、BA.2と同様に、すべての株において感染ハムスターは体重減少を示さなかった。一方、デルタ株を感染させたハムスターはすべての個体で体重が減少していた。
・BA.4あるいはBA.5を感染させたハムスターでは、呼吸器症状の悪化も認められなかった。
・ハムスターの肺や鼻におけるBA.4とBA.5の増殖能は、BA.2と同程度だったが、デルタ株と比べると低かった。さらに、感染動物肺の病理解析を行ったところ、BA.4/5感染ハムスターでは、BA.2感染ハムスターと同程度の軽度の炎症しか見られなかった。
・新型コロナウイルスの受容体であるヒトhACE2を発現するハムスターを用いた感染実験においても、BA.4およびBA.5の病原性と増殖能はデルタ株よりも低かった。
・BA.2とBA.4を同時に同じ個体に感染させ、どちらの株がハムスターの呼吸器でより増えやすいのか競合試験を行ったところ、呼吸器で検出されたそれぞれの株の割合は、同程度か、ややBA.4のほうが高い傾向が見られた。一方、BA.2とBA.5を同時に感染させたハムスターの呼吸器では、BA.5の割合が高いことがわかった。
研究グループによると、BA.2をもとに、スパイク蛋白質のみをBA.4やBA.5と置き換えた組換えウイルスを用いた感染実験では、BA.4やBA.5のスパイク蛋白質を有するウイルスの病原性がBA.2よりも高いとする報告もあるが、患者から分離したウイルスを用いた本研究では、BA.2、BA.4およびBA.5の病原性に違いがないことが明らかになったとしている。
(ケアネット 古賀 公子)