日本人統合失調症患者における認知機能と社会機能との関係

提供元:ケアネット

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公開日:2022/11/14

 

 統合失調症患者の活動性低下、就労困難、予後不良には、社会機能障害が関連していると考えられる。統合失調症患者の社会機能には、注意力や処理速度などの認知機能が関連しているが、認知機能と社会機能との関連はあまりよくわかっていない。そのため、社会機能に影響を及ぼす因子を明らかにすることは、統合失調症の治療戦略を考えるうえで重要である。金沢医科大学の嶋田 貴充氏らは、統合失調症患者の社会機能に影響を及ぼす因子をレトロスペクティブに分析し、統合失調症患者の認知機能と社会機能との間に有意な相関が認められたことを報告した。Journal of Clinical Medicine Research誌2022年9月号の報告。

 患者の背景、知能指数(IQ)スコア、統合失調症認知機能簡易評価尺度の日本語版(BACS-J)スコア、抗精神病薬の投与量、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)スコア、社会機能評価尺度の日本語版(SFS-J)の各サブスケールに影響を及ぼす因子を評価するため、単変量解析および多変量解析を用いた。ボンフェローニ補正を用いて、単変量解析の各因子との相関を評価した。多変量解析では、ステップワイズ法を用いて、独立変数を選択した。各モデルのサンプルサイズを考慮し、ステップワイズ法で抽出される変数を最大3つに設定した。また、SFS-Jサブスケールスコアと各因子の標準偏回帰係数(standard β)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・統合失調症患者36例(平均年齢:57.8歳、平均罹病期間:34.8年、総入院期間:196.7ヵ月)のデータを分析した。
・単変量解析では、7つのSFS-Jサブスケールとの有意な関連が認められた。多変量解析では、そのうち3つのみに有意な関連が認められた。
・多変数モデルでは、BACS-Jの言語流暢性とSFS-Jのひきこもり、対人関係、就労との間に正の相関が認められた。
・PANSSスコア、IQスコア、抗精神病薬の投与量には、SFS-Jサブスケールスコアとの明らかな関連は認められなかった。

(鷹野 敦夫)