金城大学の吉武 将司氏らは、地域在住高齢者において、軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病(AD)の嗅覚同定能力を調査し、識別困難なにおいの特定を試みた。その結果、MCIやADの高齢者は認知機能が正常な高齢者と比較し、嗅覚同定能力の低下が認められた。このことから著者らは、認知症患者に対し嗅覚刺激に関連する治療介入を行う前に、嗅覚の評価を行うことが重要であるとしている。Journal of Physical Therapy Science誌2022年11月号の報告。
対象は、MCI高齢者(MCI群)12例、AD高齢者(AD群)17例、どちらでもない高齢者(対照群)30例。嗅覚同定能力は、においスティック(OSIT-J)による検査を用いて評価し、スコアの群間比較および群間差を調査した。次に、各においに対する正答率の群間比較を行い、識別困難なにおいの特定を試みた。
主な結果は以下のとおり。
・MCI群およびAD群のOSIT-Jスコアは、対照群と比較し、有意に低かった。
・刺激臭の正確な識別には、群間差が認められなかった。
・AD群では、調理ガスのにおいの識別が困難であった。
・MCI群およびAD群では、食物に関連するにおいの識別能力の低下が認められた。
(鷹野 敦夫)