不眠症に対する長期的な薬物療法を中止すると、リバウンドや禁断症状が出現し、最適でない治療につながる可能性がある。琉球大学の高江洲 義和氏らは、レンボレキサントの第III相臨床試験の事後分析を行い、不眠症治療におけるレンボレキサント長期治療中止後の影響を評価した。その結果、レンボレキサントは反跳性不眠リスクが低く、6~12ヵ月後の長期治療後に突然中止した場合でも、その有効性が維持されることを報告した。Clinical and Translational Science誌オンライン版2022年12月23日号の報告。
12ヵ月間グローバル多施設共同ランダム化第III相臨床試験E2006-G000-303研究(Study 303)において12ヵ月間または6ヵ月間のレンボレキサントによる積極的な治療とフォローアップ期間を完了した患者を対象に、二重盲検並行群間研究の事後分析を実施した。対象は、登録前4週間の間に週3回以上の主観的な入眠潜時30分以上および/または主観的な中途覚醒60分以上が認められた成人不眠症患者655例。レンボレキサント5mg(LEM5)群または10mg(LEM10)群、プラセボ群に1:1:1の割合でランダムに割り付け、6ヵ月間の治療を行った。その後、LEM5群とLEM10群ではさらに6ヵ月間治療を継続し、プラセボ群はLEM5またはLEM10の治療に1:1の割合でランダムに割り付けた。12ヵ月後に治療を中止し、2週間のフォローアップを行った。患者の主観的な睡眠関連エンドポイント(入眠潜時、中途覚醒、睡眠効率、総睡眠時間)のデータは、毎日の電子睡眠日誌より収集した。禁断症状の評価には、Tyrer Benzodiazepine Withdrawal Symptoms Questionnaire(T-BWSQ)を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・12ヵ月時点でのレンボレキサントによる睡眠アウトカムの改善は、治療中止後2週間もおおむね維持されており、スクリーニングと比較し不眠症状の有意な悪化が認められた患者は20%未満であった。
・レンボレキサント中止後、T-BWSQにより禁断症状の出現は認められなかった。
(鷹野 敦夫)