2023年1月17日、住友ファーマ主催のレビー小体型認知症(DLB)に関するプレスセミナーが開催され、大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室 教授の池田 学氏から「第2の認知症、レビー小体型認知症(DLB)の多彩な症状と治療法の進歩」について、近畿大学医学部 精神神経科学教室 主任教授 橋本 衛氏からは「当事者に目を向けた診療のすすめと当事者、介護者、主治医に伝えたいこと」について語られた。
多様な症状を示し、アルツハイマー型認知症と比べてケアが難しいDLBでは、当事者、介護者、主治医の3者の理解が深まることで、当事者のQOL向上と介護者の負担軽減が期待される。
DLBの臨床症状
DLBは、進行性の認知機能障害や幻視、妄想、パーキンソニズム、便秘や低血圧などの自律神経障害など、きわめて多様な臨床症状を示す。これらの症状は同時に起こることも多い。これらを踏まえて池田氏は、「DLBにはさまざまな症状があるということを知り、認知機能障害以外の症状にも目を向けないと、患者さんが早期に受診しても見落とす可能性がある」と、主治医がDLBの臨床症状を把握する重要性について訴えた。
DLBの薬物治療、ケアのポイント
さらに池田氏は、「DLBの薬物治療では、症状に合わせて、抗認知症薬、抗パーキンソン病薬、抗精神病薬などが用いられているが、いずれも副作用の発現や症状の悪化を引き起こす可能性があり、慎重に使用すべきである。ただ、副作用を避けながらの薬物治療は難しく、家庭では安全を保てない場合もあるため、必要に応じて入院や入所も積極的に考慮してほしい」と述べた。
当事者の意向を尊重した認知症医療
従来のDLB治療では、当事者は認知症に対して自覚はなく、自分から症状を適切に判断して訴えることはできないという思い込みから、当事者不在の医療が行われることがあった。このことから橋本氏は、「当事者の半数以上は自分の治療ニーズを伝えることができる。また、当事者主体の医療・介護等の徹底について、厚生労働省の新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)でも掲げられている。介護者だけではなく、当事者にもっと目を向けた診療を心掛ける必要がある」と強調した。
当事者と介護者の治療ニーズと主治医の理解度
当事者と介護者が困っている症状は多岐にわたるため、専門医であってもその症状を完璧に把握することは難しい。とくに、自律神経障害、睡眠障害は見逃されやすい。橋本氏は、「DLBの症状を理解したうえで、当事者や介護者は治療ニーズをしっかりと主治医に伝え、主治医は両者の治療ニーズにしっかりと目を向けることで、当事者の意向を尊重する診療が広まっていくことを期待している」と講演を締めくくった。
(ケアネット 溝口 ありさ)