2023年2月16日、日本臨床腫瘍学会はプレスセミナーを開催し、会長の馬場 英司氏(九州大学)らが、第20回学術集会(2023年3月16~18日)の注目演題などを発表した。
今回のテーマは「Cancer, Science and Life」で、科学に基づいた知⾒ががん医療の進歩を支え、患者さんが満⾜できる⽣活、実りある⼈⽣を送る助けになることを目的とする。演題数は1,084であり、うち海外演題数は289と過去2番⽬の多さになる。
プレジデンシャルセッション
プレジデンシャルセッションでは発表者の他に、国内外の専門家がディスカッサントとして研究成果の意義を解説する。演題は学術企画委員会が厳正に審査を行い、全分野より合計19演題が選定された。
<呼吸器>2023年3月16日(木)15:10〜17:10
1.既治療の進行・再発非小細胞肺癌に対するニボルマブ(NIV)対NIV+ドセタキセルのランダム化比較第II/III相試験:TORG1630
古屋 直樹氏(聖マリアンナ医科大学病院呼吸器内科)
2.First Report of Cohort3 and Mature Survival Data From the U31402-A-U102 Study of HER3-DXd in EGFR-Mutated NSCLC
林 秀敏氏(近畿大学医学部腫瘍内科)
3.完全切除されたII-IIIA期の非扁平上皮非小細胞肺癌に対するPEM/CDDPとVNR/CDDPを比較する第III相試験:JIPANG最終解析
山崎 宏司氏(国立病院機構九州医療センター呼吸器外科)
4.Adjuvant osimertinib in resected EGFR-mutated stageII-IIIA NSCLC:ADAURA Japan subgroup analysis
釼持 広知氏(静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科)
5.Sotorasib versus Docetaxel for Previously Treated Non-Small Cell Lung Cancer with KRAS G12C Mutation:CodeBreaK 200 Phase3 Study
岡本 勇氏(九州大学大学院医学研究院呼吸器内科学)
<その他がん>2023年3月17日(金)8:20〜10:20
1.MOMENTUM:Phase3 Study of Momelotinib vs Danazol in Symptomatic and Anemic Myelofibrosis Patients post-JAK Inhibition
Jun Kawashima氏(Sierra Oncology, a GSK company, San Mateo, CA, USA)
2.Brexucabtagene Autoleucel in Relapsed/Refractory Mantle Cell Lymphoma(R/R MCL) in ZUMA-2:Durable Responder Analysis
Javier Munoz氏(Banner MD Anderson Cancer Center, Gilbert, AZ, USA)
3.Pembrolizumab+chemoradiation therapy for locally advanced head and neck squamous cell carcinoma(HNSCC):KEYNOTE-412
田原 信氏(国立がん研究センター東病院頭頸部内科)
4.APOBEC signature and the immunotherapy response in pan-cancer
Ya-Hsuan Chang氏(Institute of Statistical Science, Academia Sinica, Taipei, Taiwan)
5.FGFR2融合/再構成遺伝子を有する肝内胆管がん患者に対するFutibatinibの第2相試験:FOENIX-CCA2試験の日本人サブグループ解析結果
森実 千種氏(国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科)
<乳腺>2023年3月17日(金)16:25〜18:05
1.Overall survival results from the phase3 TROPiCS-02 study of sacituzumab govitecan vs chemotherapy in HR+/HER2-mBC
Hope Rugo氏(Department of Medicine, University of California-San Francisco, Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center, San Francisco, CA, USA)
2.HER2低発現の手術不能又は再発乳癌患者を対象にT-DXdと医師選択治療を比較したDESTINY-Breast04試験のアジアサブグループ解析
鶴谷 純司氏(昭和大学先端がん治療研究所)
3.T-DM1による治療歴のあるHER2陽性切除不能及び/又は転移性乳癌患者を対象にT-DXdと医師選択治療を比較する第III相試験(DESTINY-Breast02)
高野 利実氏(がん研究会有明病院乳腺内科)
4.Phase1/2 Study of HER3-DXd in HER3-Expressing Metastatic Breast Cancer:Subgroup Analysis by HER2 Expression
岩田 広治氏(愛知県がんセンター乳腺科部)
<消化器>2023年3月18日(土)9:45〜11:45
1.切除不能局所進行食道扁平上皮癌に対する化学放射線療法後のアテゾリズマブの有効性・安全性をみる第II相試験:EPOC1802
陳 勁松氏(がん研究会有明病院消化器化学療法科)
2.PD-1 blockade as curative intent therapy in mismatch repair deficient locally advanced rectal cancer
Andrea Cercek氏(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, USA)
3.RAS野生型切除不能進行再発大腸癌に対するm-FOLFOXIRI+cetuximab vs. bevacizumabの生存解析:DEEPER試験(JACCRO CC-13)
辻 晃仁氏(⾹川⼤学医学部臨床腫瘍学講座)
4.PARADIGM試験における早期腫瘍縮小割合および最大腫瘍縮小割合に関する検討
室 圭氏(愛知県がんセンター薬物療法部)
5.Efficacy and safety of fruquintinib in Japanese patients with refractory metastatic colorectal cancer from FRESCO-2
小谷 大輔氏(国立がん研究センター東病院消化管内科)
また、プレスセミナーでは、他の注目演題として下記が紹介された。
がん免疫療法ガイドライン
下井 ⾠徳氏(国⽴がん研究センター中央病院)によるがん免疫に関するレクチャーの後、3月発刊予定の「がん免疫療法ガイドライン第3版」のアウトラインが紹介された。昨今注目されているがん免疫療法において、医療者へ適切な情報を提供するためのがん種横断的な治療ガイドラインの改訂版である。学術大会では委員会企画として、第3版改訂のポイント、新しいがん免疫療法、がんワクチン療法と免疫細胞療法のエビデンスが解説される。
委員会企画4(ガイドライン委員会2)
第1部:がん免疫療法ガイドライン改訂第3版の概要
3⽉16⽇(⽊)15:50〜17:20(第1部 15:50〜16:35)
がんゲノム医療
田村 研治氏(島根大学医学部附属病院)によって、がん治療におけるゲノム医療の流れや課題などが紹介された。学術大会では、マルチコンパニオン検査とCGP検査の使い分けについて解説した上で、近未来の「がんゲノム医療」はどうあるべきかを専門医が討論する。解決すべき問題の例として「コンパニオン診断薬として承認されている遺伝子異常と、ゲノムプロファイリング検査としての遺伝子異常を同じ遺伝子パネルで検査すべきか?区別すべきか?」などが挙げられた。
シンポジウム8
遺伝子異常特異的かつ臓器横断的な薬剤の適正使用、遺伝子パネルの在り方とは?
3月16日(木)8:30〜10:00
患者支援の最前線
佐々木 治一郎氏(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター)によって、わが国におけるがん患者支援の現状が紹介された。より総合的ながん患者支援が求められる中、支援活動の質の担保や最低限のルールの確立などのための教育研修が必要となっている。学術大会では、国、学会、NPOの演者ががん患者支援者への教育研修について発表・議論される。
会長企画シンポジウム4
患者支援者の教育研修:我が国における現状と課題
3月16日(木)14:00〜15:30
デジタル化が進めるがん医療
佐竹 晃太氏(日本赤十字医療センター)によって、治療用アプリとヘルスケアアプリとの違い、実臨床における活用方法、国内における開発状況などが紹介された。治療用アプリの活用により、重篤な有害事象の減少、QOLの改善、生存期間の改善などが期待されている。学術大会では、新しい治療アプローチの昨今の動向や、臨床導入する上での潜在的課題について議論される。
シンポジウム4
将来展望:予防・治療を目的としたモバイルアプリの開発
3月16日(木)15:50~17:20
(ケアネット 森 幸子)