性的マイノリティー(レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー)の乳がん患者では、シスジェンダー(性自認と生まれ持った性別が一致している人)で異性愛者の乳がん患者と比較して、症状発現から診断までの期間が長く、再発リスクが3倍であることが、米国・スタンフォード大学のErik Eckhert氏らの研究により明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2023年2月2日号掲載の報告。
多くの医療機関では患者の性的指向や性自認に関するデータは収集していないため、性的マイノリティーにおける乳がんの診断、治療、予後などの医療格差はあまり知られていない。そこで研究グループは、シスジェンダーの異性愛者と比較して、性的マイノリティーの乳がん治療の質と再発率を調査した。
対象は、2008年1月1日~2022年1月1日に治療を受けた性的マイノリティーの乳がん患者92例と、診断年、年齢、病期、ホルモン受容体およびHER2発現でマッチさせたシスジェンダーで異性愛者の乳がん患者92例(対照群)であった。
主な結果は以下のとおり。
・参加者の診断時の年齢中央値は49歳(範囲:43~56歳)で、性的マイノリティー群はレズビアンが80%(74例)、バイセクシャルが13%(12例)、トランスジェンダーが6%(6例)であった。
・対照群と比較して、性的マイノリティー群では症状発現から診断までの期間が長かった(診断までの期間の中央値:性的マイノリティー群64日vs.対照群34日、補正後ハザード比[aHR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.42~0.99、p=0.04)。
・性的マイノリティー群では、がん専門医が推奨する治療を拒否する割合が高かった(補正後オッズ比[aOR]:2.27、95%CI:1.09~4.74、p=0.03)。
・性的マイノリティー群では、乳がんの再発率が高かった(aHR:3.07、95%CI:1.56~6.03、p=0.001)。
これらの結果より、研究グループは「シスジェンダーで異性愛者の乳がん患者と比較して、性的マイノリティーの乳がん患者では診断が遅れており、再発リスクが3倍であることが明らかになった。性的マイノリティーでは医療格差があり、さらなる調査が必要である」とまとめた。
(ケアネット 森 幸子)