認知症の予防には、早期介入が非常に重要である。しかし、認知症の早期発見に、どのようなスクリーニングが有用であるかは、これまで明らかになっていない。福井大学の濱野 忠則氏らは、サポートやケアを必要とするリスクが高い高齢者を特定するため厚生労働省が作成した基本チェックリストに基づき福井県の認知症予防チームが開発したYes/No自己申告調査の結果と、ミニメンタルステート検査(MMSE)との関連を検討し、Yes/No自己申告調査の認知症スクリーニングに対する有効性を評価した。その結果、認知症スクリーニングに対するYes/No自己申告調査の有効性が示された。とくに、「電話番号を調べて電話をかけられない」「銀行やATMで自身の預貯金を管理できない」などは、認知症のサインであると報告されている。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年1月4日号の報告。
福井県在住の介護保険制度を利用していない65歳以上の高齢者8万7,867人を対象に、Yes/No自己申告調査を郵送にて実施した。調査結果に基づき、選択された対象者には個別に、MMSEによる評価のため地元の病院での受診を勧めた。
主な結果は以下のとおり。
・Yes/No自己申告調査に回答した5万1,043人(58.1%)のうち、8,803人(17.2%)に対し、認知症の可能性を確認するため、かかりつけ医の診療を受けるように促した。
・地元の病院で受診した高齢者1,877人(21.3%)のうち、MMSEのデータが収集できた1,873人(男性:803人、女性:1,070人、平均年齢:76.8±6.4歳)を分析に含めた。
・多変量解析で低MMSEスコア(23以下)との関連が認められた項目は次のとおりであった。
●電話番号を調べて電話をかけられない(オッズ比[OR]:2.74、95%信頼区間[CI]:1.89~3.97、p<0.0001)
●銀行やATMで自身の預貯金を管理できない(OR:2.12、95%CI:1.46~3.07、p<0.0001)
●今日が何日かわからない(OR:2.03、95%CI:1.40~2.96、p<0.0001)
●同じことを繰り返し質問する(OR:1.98、95%CI:1.45~2.70、p<0.0001)
(鷹野 敦夫)