週1回の投与で血友病に効果を発揮する新しい血液凝固第VIII因子製剤/サノフィ

提供元:ケアネット

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公開日:2023/03/24

 

 サノフィは2023年3月7日、米国食品医薬品局(FDA)が血液凝固第VIII因子製剤efanesoctocog alfaを承認したと発表した。米国におけるefanesoctocog alfaの適応症は、血友病Aの成人患者と小児患者における定期補充療法、出血管理を目的とする出血時補充療法、ならびに周術期管理。

血友病Aに対する第VIII因子製剤の課題

 血友病Aは、生涯続く希少疾患であり、血液凝固因子が欠乏する。その結果、血液凝固能の低下による関節での出血によって、関節障害や慢性疼痛が引き起こされ、生活の質(QOL)が低下する恐れがある。

 これまで、第VIII因子製剤は何の加工もないと半減期が12時間程度であり、2日に1回の注射でもトラフを1%保つことが困難だった。第VIII因子の半減期はvon Willebrand因子(VWF)の半減期に規定されており、第VIII因子をいくら加工しても半減期の上限があり、既存の半減期延長製剤では半減期は一律1.5倍程度である。

 efanesoctocog alfaは、VWFによる半減期の上限を克服するためVWFの一部を第VIII因子に結合させるという発想のもと設計された新たなクラスの第VIII因子製剤である。週1回の投与で1週間の大半にわたり血液凝固因子の活性レベルを正常値もしくは正常値に近い(40%以上)範囲に維持することができ、従来の第VIII因子製剤に比べ有意に優れた出血抑制効果が期待される。

efanesoctocog alfaのXTEND-1試験は日本を含む19ヵ国で実施

 重症血友病A患者に対するefanesoctocog alfaの有効性、安全性、薬物動態の評価を目的とするXTEND-1試験1)は、第VIII因子補充療法を受けた経験のある12歳以上の重症血友病Aの患者(159例)を対象に、efanesoctocog alfaの週1回投与の安全性、有効性、薬物動態の評価を目的とした第III相非盲検介入試験であり、日本を含む19ヵ国48施設で患者の登録が行われた。

 被験者はefanesoctocog alfa(50 IU/kg体重)の週1回静脈内投与による定期補充療法を52週間行うA群(133例)、efanesoctocog alfa(50 IU/kg体重)のオンデマンド療法を26週間施行後に同薬(50 IU/kg体重)の週1回の定期補充療法を26週間行うB群(26例)の2つの群に分けられた。

 主要エンドポイントは、A群の平均年間出血回数(annualized bleeding rate:ABR)とされた。主な副次エンドポイントは、A群における定期補充療法中のABRと、試験開始前の第VIII因子製剤による定期補充療法中のABRとの患者内比較であった。

 主要評価項目であるA群のABRの平均値は0.70(95%信頼区間[CI]:0.5~1.0)、ABRの中央値は0.0(Q1、Q3:0.0、1.0)であった。また、試験開始前の第VIII因子製剤による定期補充療法との患者内比較ではABRが77%減(95%CI:58~87)と有意な減少を示した。

 関節内出血の抑制効果も認められ、出血が繰り返し発生する関節(例:膝、足首、肘)を対象とした評価では、efanesoctocog alfaにより100%の標的関節消失効果が得られた。

 安全性プロファイルは許容できるものであった。第VIII因子インヒビターの発現は認められず、比較的高頻度(10%超)で認められた副作用は、頭痛と関節痛であった。

efanesoctocog alfaは血友病患者の生活を変える薬剤

 efanesoctocog alfaは世界で初めての週1回の投与で出血抑制効果が得られる血液凝固因子製剤である。

 efanesoctocog alfaは2022年5月にFDAによって、第VIII因子製剤として初のブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定されており、2021年にはファストトラック審査の対象であった。EUにおける承認申請は、2023年下半期の予定。日本での承認申請が待たれる。

(ケアネット 丸山 香)

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