治療中止に関連する未知の因子の特定は、自然言語処理(NLP)のテクノロジーを用いて精神科電子カルテのテキスト情報を分析および整理することにより可能であると考えられる。千葉大学の伊豫 雅臣氏らは、NLPのテクノロジーを用いたMENTATによるデータベースを使用し、ブレクスピプラゾールの治療継続率および治療中断に影響を及ぼす因子の評価を試みた。その結果、ブレクスピプラゾールの治療中止と関連する可能性のある、8つの潜在的な新たな因子が特定された。著者らは、今後の統合失調症患者に対する治療戦略や治療継続率の改善につながるとまとめている。Schizophrenia Research誌オンライン版2023年3月27日号の報告。
2018年4月18日~2020年5月15日に新たにブレクスピプラゾール治療を開始した統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブ観察研究を実施した。ブレクスピプラゾール初回投与から180日間フォローアップを行った。ブレクスピプラゾールの治療中止に関連する因子は、構造化および非構造化された患者データを用いて評価した(2017年4月18日~2020年12月31日)。
主な結果は以下のとおり。
・分析対象患者は515例(平均年齢:48.0±15.3歳、男性の割合:47.8%)。
・カプランマイヤー分析では、ブレクスピプラゾールの180日間の累積継続率は、29%(推定値:0.29、95%信頼区間[CI]:0.25~0.33)であった。
・単変量Cox比例ハザード分析では、ブレクスピプラゾールの治療中止に関連する16の独立した因子を特定し、多変量Cox比例ハザード分析を実施した。
・多変量解析で特定されたブレクスピプラゾールの治療中止に関連する8つの因子は以下のとおりであった。
●身体合併症を有する(ハザード比[HR]:0.592、95%CI:0.46~0.76、p<0.001)
●入院期間が長い(HR:0.998、95%CI:0.997~0.999、p<0.001)
●過去1年間の抗精神病薬の投与量がクロルプロマジン等価換算量で200~400mg/日(vs.200mg/日以下、HR:0.626、95%CI:0.42~0.93、p=0.020)
●電気けいれん療法の治療歴(HR:1.655、95%CI:1.01~2.70、p=0.044)
●主な連絡先情報の入手が可能(HR:1.523、95%CI:1.14~2.03、p=0.004)
●犯罪歴(HR:1.367、95%CI:1.10~1.70、p=0.005)
●ブレクスピプラゾール用量2mgまでの増量期間が28日超(HR:1.600、95%CI:1.26~2.03、p<0.001)
●陽性症状以外の症状の出現・悪化(HR:2.120、95%CI:1.52~2.96、p<0.001)
(鷹野 敦夫)