両親の認知症歴は、子供の認知症リスクを上昇させるともいわれているが、その結果に一貫性は見られていない。韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのDae Jong Oh氏らは、両親の認知症歴と子供の認知症リスクに関して、認知症サブタイプおよび性別の影響を調査するため、本検討を行った。その結果、母親の認知症歴は、男女ともに子供の認知症およびアルツハイマー病(AD)リスクとの関連が認められた。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年5月10日号の報告。
8ヵ国、9件の人口ベースコホート研究より抽出された高齢者1万7,194人のデータを用いて、横断的研究を実施した。対象研究では、認知症の診断のため、対面診断、身体検査、神経学的検査、神経心理学的評価が実施された。父親および母親の認知症歴と子供の認知症、認知症サブタイプのリスクとの関連を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・対象者の平均年齢は72.8±7.9歳、女性の割合は59.2%であった。
・両親の認知症歴は、認知症およびADリスク上昇と関連が認められたが、非ADリスクとの関連は認められなかった。
【認知症】オッズ比(OR):1.47、95%信頼区間(CI):1.15~1.86
【AD】OR:1.72、95%CI:1.31~2.26
・母親の認知症歴は、子供の認知症およびADリスクとの関連が認められたが、父親では認められなかった。
【認知症】OR:1.51、95%CI:1.15~1.97
【AD】OR:1.80、95%CI:1.33~2.43
・子供の性別に分けた分析でも、同様の結果が認められた。
【男性】OR:2.14、95%CI:1.28~3.55
【女性】OR:1.68、95%CI:1.16~2.44
・母親の認知症歴は、臨床試験においてADリスクの高い人を特定し、リスク層別化に有用なマーカーである可能性が示唆された。
(鷹野 敦夫)