双極性障害患者の入院期間やそれに影響を及ぼす因子を特定するため、 中国・首都医科大学のXiaoning Shi氏らは、本検討を行った。その結果、入院期間の長い双極性障害患者は、自殺リスクが高く、複雑な多剤併用が行われていた。入院期間を短縮するためには、うつ病エピソードの適切な管理と機能的リハビリテーションが有用な可能性がある。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月19日号の報告。
双極I型障害またはII型障害患者を対象に多施設共同観察コホート研究を実施した。2013年2月~2014年6月に中国6都市、7施設より募集した外来患者520例を、継続的なサンプリングパターンを用いてフォローアップ調査を行った。本研究は、12ヵ月のレトロスペクティブ期間と9ヵ月のプロスペクティブ期間で構成された。対象患者の人口統計学的特徴および臨床的特徴を収集した。入院期間(プロスペクティブ期間の入院日数)の影響を及ぼす因子の分析には、ポアソン回帰を用い、入院期間(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間)の分析には、線形回帰分析を用いた。性別、年齢、教育年数、職業的地位、在留資格、精神疾患の家族歴、薬物乱用の併存、不安障害の併存、自殺企図の回数(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間での発生回数)、初回エピソード特性、双極性障害のタイプ(I型またはII型)を変数として用いた。
主な結果は以下のとおり。
・ポアソン回帰分析では、入院期間と相関が認められた因子は、自殺企図の回数(発生率[IRR]:1.20、p<0.001)、抗精神病薬の使用(IRR:0.62、p=0.011)、抗うつ薬の使用(IRR:0.56、p<0.001)であった。
・線形回帰分析では、うつ病エピソード期間の長期化や機能低下と関連する可能性のある双極II型障害(β:0.28、p=0.005)および失業(β:0.16、p=0.039)は、長期入院との関連が認められた。
・自殺企図の回数と短期入院との間に関連傾向が認められた(β:-0.21、p=0.007)。
・自殺リスクの高い患者では、治療が不十分、コンプラインアンス不良の傾向があるため、入院中に適切に評価し、治療を行う必要がある。
(鷹野 敦夫)