双極性障害のラピッドサイクラーと寛解状態の患者における臨床的特徴~MUSUBI研究

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/06/28

 

 双極性障害は、ラピッドサイクラーの場合より重篤な疾患リスクとなり、寛解状態で進行することで予後が良好となる。関西医科大学の高野 謹嗣氏らは、日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」の大規模サンプルを用いて、双極性障害患者におけるラピッドサイクラーと寛解状態の進行に対する患者背景および処方パターンの影響を検討した。その結果、ラピッドサイクラーと寛解状態の双極性障害患者は、相反する特徴を有し、予後に影響を及ぼす社会的背景および因子には、それぞれ特徴が認められた。著者らは、これらの臨床的な特徴を理解することは、実臨床での双極性障害患者のマネジメントに役立つであろうとしている。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月17日号の報告。

 MUSUBI研究では、日本の臨床医に対し、レトロスペクティブな医療記録調査に基づくアンケートを実施し、連続した双極性障害患者2,650例のデータを収集した。初回調査は2016年、2回目の調査は2017年に実施した。調査項目は、患者背景、現在の気分エピソード、臨床および処方の特徴に関する情報とした。

 主な結果は以下のとおり。

・初回調査において、対象患者の10.6%がラピッドサイクラーであり、2年連続でラピッドサイクラーであった患者は3.6%であった。
・ラピッドサイクラーと関連していた因子は、双極I型障害、自殺念慮、罹病期間、炭酸リチウムおよび抗精神病薬の使用であった。
・ラピッドサイクラーへの進展のリスク因子として、発達障害の併発、抗不安薬および睡眠薬の使用が挙げられた。
・初回調査において、寛解状態であった患者は16.4%であり、2年連続で寛解状態であった患者は11.0%であった。
・寛解状態を達成するための因子として、高齢、雇用状態、精神症状やパーソナリティ障害併発の少なさ、抗うつ薬・抗精神病薬・抗不安薬の少なさ、さらなるリチウム使用が挙げられた。

(鷹野 敦夫)